Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
異常妊娠/婦人科疾患

(S751)

子宮肉腫と子宮筋腫の併存症例においてエラストグラフィーの有用性が示唆された一例

A case of patient coexisting uterine sarcoma and myoma which was valuable to use ultrasound elastography

田中 圭紀, 石橋 めぐみ, 天雲 千晶, 真嶋 允人, 伊藤 恵, 森 信博, 花岡 有為子, 金西 賢治, 田中 宏和, 秦 利之

Tamaki TANAKA, Megumi ISHIBASHI, Chiaki TENKUMO, Masato MASHIMA, Megumi ITOU, Nobuhiro MORI, Uiko HANAOKA, Kenji KANENISHI, Hirokazu TANAKA, Toshiyuki HATA

香川大学医学部附属病院周産期科女性診療科

department of obstetrics and gynecology, Kagawa University

キーワード :

【緒言】
超音波エラストグラフィーは組織の歪み易さの違い,すなわち硬度の違いを表示する技術であり,Ophirらによって報告された.実際には検査対象部に超音波プローブで圧を加え,関心領域においてその変形率分布を求め,領域内で歪みにくい部分は青く,歪みやすい部分は赤く描出されるというものである.この技術は現在,乳癌や前立腺癌の診断領域に応用され始めている.産婦人科領域においては,子宮筋腫や子宮腺筋症,内膜ポリープ等,2D超音波で判別しづらい疾患の診断に有用であるという報告がある.また,カラードプラ法は婦人科領域において頻用されている技法であり,血流の分布から子宮に発生する腫瘤の鑑別に非常に有用である.
今回,子宮肉腫と子宮筋腫とが併存していた症例において,エラストグラフィーとカラードプラ法を用いて両者の識別に有用であったと考えられる一例を経験したので文献的考察を含めて報告する.
【症例】
症例は65歳,0経妊0経産,53歳時閉経.平成25年3月初旬より下腹部痛が出現し,前医でのCT,MRIで子宮肉腫を疑われ当院に紹介となった.当院で行ったPET−CTではFDGの異常集積を認める巨大腫瘤と,その周囲に石灰化を伴う淡い集積のある腫瘤を2つ認めた.他に左肺上葉等にも転移を疑う異常集積がみられた.
経腹超音波では巨大腫瘤の内部には豊富な血流がみられ,エラストグラフィーでは赤色モザイク様に描出され,比較的柔らかい腫瘤であることが想定された.また,巨大腫瘤近傍の腫瘤は内部の血流を認めず,エラストグラフィーで周辺が緑色に縁取られる青色の病変として描出され,周囲に比して硬い組織であることが考えられた.超音波,MRI,PET-CTの結果から前者の巨大腫瘤に関しては子宮肉腫の可能性が高く,後者の巨大腫瘤近傍の腫瘤は子宮筋腫ではないかと考えた.診断の確定のために施行した開腹術の所見は,脆弱で易出血性の腫瘤の部位と漿膜下筋腫と思われる部位とに分かれていた.腫瘍の強固な癒着のため困難であったため,主要な腫瘤の一部の生検と近傍の漿膜下筋腫と思われた腫瘤の核出のみを行った.病理組織結果では,巨大腫瘤はundifferentiated stromal sarcomaであり,漿膜下筋腫として提出した部分はleiomyomaであった.術後,化学療法を行ったが,手術施行から約3ヶ月後に永眠された.
【考察】
子宮に発生する肉腫は子宮体部悪性腫瘍のうちの約8%を占めると言われていおり,稀な疾患である.しかし,血行性転移をきたしやすく,その予後は不良である.また,子宮筋腫との鑑別には,MRIやPET−CTなどの画像診断が有用であると言われているが,明確な診断基準は存在せず,子宮筋腫が変性をきたした場合にはMRIや超音波断層法では不整な,あたかも子宮肉腫を疑わせるような像を呈し,鑑別はさらに困難となる.
超音波で両者を観察した場合,カラードプラ法を用いると,子宮肉腫は子宮内部に豊富な血流を認めるのに対し,子宮筋腫は辺縁に血流の縁取りがみられることが特徴とされている.また,エラストグラフィーにおいて子宮筋腫は内部が青色を呈し,辺縁に緑または赤色の縁取りを呈すると言われている.子宮肉腫のエラストグラフィー像に関する報告はまだ少ないが,内部に血管が豊富であり,壊死や出血を反映して今回のような赤色モザイク像を呈するものと考えられる.
【結論】
子宮肉腫と子宮筋腫の鑑別において,従来のカラードプラ法に加えてエラストグラフィーを用いることでより腫瘤の性状が明らかになり,超音波での診断をより確実にするものと考える.