Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓4

(S741)

NAFLDの肝機能・線維化・耐糖能障害に対するDPP-IV阻害剤の改善効果:LFI測定の有用性

The Effect of DPP-IV Inhibitor to a Liver Function, Fibrosis, and HbA1c of NAFLD: Usefulness of LFI Measurement

菅野 雅彦1, 中田 邦也2, 瀬尾 靖3, 三木 章4

Masahiko SUGANO1, Kuniya NAKATA2, Yasushi SEO3, Akira MIKI4

1すがの内科クリニック内科, 2中田医院内科, 3せお眼科内科クリニック内科, 4三木内科クリニック内科

1Internal Medicine, Sugano Internal Medicine Clinic, 2Internal Medicine, Nakata Medical Clinic, 3Internal Medicine, Seo Ophthalmology Internal Medicine Clinic, 4Internal Medicine, Miki Internal Medicine Clinic

キーワード :

【目的】
DPP-IV阻害剤シダグリプチンがNAFLD患者の肝機能を改善した報告はあるが,肝線維化の改善についての報告はない.我々はテネリグリプチンを用いて肝機能のみならず肝線維化にも効果があるか検討する.
【対象と方法】
今回はその前段階の検討につき報告.症例はNAFLD合併の糖尿病に対しDPPIV阻害剤を投与した38例(61.8歳,M:F=29:9,HbA1c6.7%,BMI24.9,平均投与期間:11.9ヶ月),AST, ALT, HbA1cおよび線維化マーカーとしてNAFLD fibrosis score(NFS), FIB4index,及びUS検査時に測定したLiver Fibrosis Index(LFI)等につき各々の相関及び投与前後での変化(⊿で示す)を検討した.LFIは日立アロカ社Ascendusを用い,NAFLDはUSでのbright liver及び肝腎contrastの存在とHBsAg, HCVAb陰性及び自己免疫性肝疾患除外で診断した.LFIが体格に左右される可能性があるため一部の検討をBMI25以上17例と未満21例に分け,またC型肝炎にて概ねF3に相当するLFI2.4以上17例と未満21例に分類し検討した.
【成績】
線維化マーカー相互の検討NFSとFIB4の投与前はr=0.311相関傾向だが投与後はr=0.354(P<0.005).⊿NFSと⊿FIB4もr=0.463(P<0.05)と相関.LFIとNFSはr=0.044,LFIとFIB4はr=0.221で特に前者は相関が見られず,変化で見ると⊿LFIと⊿NFSはr=0.051(BMI>25: 0.283,<25; 0.013).⊿LFIと⊿FIB4はr=0.084(BMI>25: 0.166,<25; 0.128)でいずれも相関関係は難しいが,図で表すと回帰直線近くの座標に位置する症例が多く,今後の症例数増加にて相関が向上する可能性は高い.耐糖能と肝機能の変化の検討: HbA1c:6.72→6.61(BMIは24.87→24.93と不変).AST25.4→21.4(P<0.05), ALT28.9→22.7(P<0.01)と改善.線維化マーカーの変化:ではLFI:2.51→2.27,NFS:2.23→2.17,FIB4:0.92→0.83といずれも有意差はないが低下傾向.⊿LFIと⊿HbA1cの相関はr=0.077(BMI>25: 0.123,<25; 0.301)で傾向のみだが,HbA1cの低下した17症例中12例がLFIも低下.LFI>2.4の15例で⊿LFIと⊿HbA1cはr=0.612(P<0.05)と相関,LFI<2.4の20例でもr=0.432と相関傾向.⊿HbA1cと⊿FIB4 は全例ではr=0036と相関なし.BMI25未満の21例でr=0.504(P<0.05)と相関,FIB4>1.44の9例ではr=0.651(P=0.057)相関傾向.⊿HbA1cと⊿NFS もr=0.064で相関ないが,LFI>2.4の15例ではr=0.271.NFS(前値は全例high)high群→Intermediate群5例の検討で:HbA1c: 7.82→6.94(P<0.05), AST42.0→24.0,ALT33.0→15.5と低下するも⊿LFIと相関なし.肝機能と線維化マーカーの変化⊿FIB4と⊿AST,⊿ALTはともにr=0.471(P<0.05)と相関,LFI>2.4の15例で⊿ASTと⊿LFIに相関傾向(r=0.317).他は⊿LFIは⊿NFSとも相関はなし.LFIと目視法の関係実質echo像と肝変形能から類推される繊維化の程度を昨年検討したLFI値で分けると,線維化なし;LFI<1.73(投与前4例:1.66,後10例:1.47),軽度;1.74〜2.12(前10:1.98,後9:1.87),中等度2.13〜2.58(前11:2.37,後5:2.30),高度>2.58(前11:3.45,後12:3.22)となり,投与後は線維化なし群が増え,同じ群の中でもLFI値の平均は低下した.
【考案】
preliminaryなデータであるが,DPP-IVにてHbA1c,肝機能,線維化マーカーとも低下傾向だがALT, AST以外有意差なし.LFI測定は線維化評価の有用な指標となりそうだが,症例を増やしての検討にあたり,測定可能な施設が限られるため目視法も検討に加える必要があるかもしれない.
【結語】
DPP-IV阻害剤がNAFLDの肝機能を改善することが示唆された.線維化については耐糖能障害改善との相関が類推され,LFIの有用性が示唆されたが,今後症例を増やして検討していく予定である.