Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓4

(S741)

造影超音波を用いた肝細胞癌に対するサイバーナイフ治療前後の血流評価

Utility of contrast-enhanced ultrasonography for hepatocellular carcinoma treated by Cyber Knife therapy

塩澤 一恵1, 渡邉 学2, 牧野 博之1, 大久保 雄介1, 塚本 信宏3, 工藤 岳秀4, 丸山 憲一4, 池原 孝2, 五十嵐 良典2, 住野 泰清2

Kazue SHIOZAWA1, Manabu WATANABE2, Hiroyuki MAKINO1, Yusuke OKUBO1, Nobuhiro TSUKAMOTO3, Takahide KUDO4, Kenichi MARUYAMA4, Takashi IKEHARA2, Yoshinori IGARASHI2, Yasukiyo SUMINO2

1済生会横浜市東部病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 3済生会横浜市東部病院放射線科, 4東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, 2Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 3Department of Radiology, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, 4Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【目的】
サイバーナイフはコンピューター制御のロボットアームに高線量照射が可能な放射線照射装置を装着した定位放射線治療装置で,肝細胞癌(HCC)など体幹部癌のわずかな呼吸性変動も捉え,追尾する機能を備えているため病変部へのピンポイント照射が可能である.低侵襲で患者への負担も少なく,HCCに対する新たな局所治療の一つとして期待されている.当院では,2011年12月からHCCに対してサイバーナイフ治療を導入し,治療効果判定には主にdynamic CTが用いられているが,治療半年以降に効果が現れる症例も多く,早期治療効果判定方法の確立が望まれる.今回,われわれは血流動態の評価に鋭敏であるソナゾイド造影超音波(CEUS)をサイバーナイフ治療前後で施行し,その画像変化について検討した.
【対象と方法】
対象は当院でサイバーナイフ治療が施行され,治療前後にCEUSによる画像評価が行なわれたHCC4例4結節.男性3,女性1例,平均年齢77.5歳,背景肝はHBV1,HCV2,アルコール1例,全例Child-Pugh分類A,初発3,異所再発1例.サイバーナイフ治療前,治療2,4,8週後,以後可能な限り4週毎にCEUSを施行した.東芝社製AplioXG,3.75MHZコンベックスプローブを使用,ソナゾイドを左肘静脈から0.5mlボーラス静注した.静注10分以降の後血管相を観察後,re-injection methodによりソナゾイド0.5ml再静注し,腫瘍部および腫瘍周囲肝実質の血流評価を行ない,治療前後で比較検討した.なお本検討は病院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
症例1:S6,24mm(50Gy/5日,20週後まで観察).腫瘍径は治療2週後から増大,20週後に縮小を認めた.腫瘍内部の血流に変化はみられなかったが,治療12週後に周囲肝実質に強い染影を認め,20週後に腫瘍部を含め周囲肝実質はdefectを呈した.症例2:S8,37mm(36Gy/3日,16週後まで観察).治療4週後に腫瘍の縮小を認め,8週後に腫瘍内部の染影低下を認めた.周囲肝実質は治療12週後に強い染影を認め,16週後に同部はdefectを呈した.症例3:S8肝表面12mm(54Gy/3日,12週後まで観察).腫瘍部は治療前からBモードで不明瞭,治療4週後に腫瘍内部の染影低下を認めた.周囲肝実質は治療2週後に強い染影を認め,4週後に同部はdefectを呈した.症例4:S4,54mm(48Gy/3日,8週後まで観察).治療8週後で腫瘍径の増大を認めたが,腫瘍内部の染影に変化はみられず,周囲肝実質に強い染影を認めた.
【考察】
本検討では高齢で息止め困難,肝表面や裏面に突出し穿刺治療が困難,外科的切除を希望されなかった症例などを対象としており,Bモードで病変部の描出が困難な症例もあるため,主にCEUS後血管相での観察とre-injection methodを用いた評価を行なった.
本検討において早い症例では治療2週後に腫瘍または周囲肝実質に何らかの変化を確認することができた.各症例における治療後の変化出現時期の相違は腫瘍径や部位,総照射線量,肝機能などの違いが影響している可能性がある.腫瘍径の変化は様々であったが,治療4週,8週後に腫瘍内部の染影低下を認める症例があり,治療効果を表していると思われた.腫瘍周囲肝実質は,症例毎に時期の差はあるものの,全4例において強い染影を認め,その後3例で腫瘍部を含めた周囲肝実質にdefectを認めた.これは放射線照射による肝実質のうっ血,血管障害などにより血流変化が現れ,その後にクッパー細胞数減少や機能低下が起き,同部がdefectを呈するのではないかと推察された.
【結語】
少数例での検討ではあるが,CEUSによる腫瘍および周囲肝実質血流の評価は,比較的早い段階でのサイバーナイフの治療効果判定に応用できる可能性が示唆された.