Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例報告2

(S719)

脳梗塞を発症し左室内に複数の可動性血栓を認めた拡張型心筋症の1例

Multiple left ventricular mobile thrombi in a stroke patient with dilated cardiomyopathy

佐藤 幾生1, 北野 貴子1, 田代 理枝1, 瀧本 光代2, 西村 裕之3, 峰 隆直4

Ikuo SATOH1, Takako KITANO1, Rie TASHIRO1, Mitsuyo TAKIMOTO2, Hiroyuki NISHIMURA3, Takanao MINE4

1西宮協立脳神経外科病院臨床検査科, 2西宮協立脳神経外科病院循環器内科, 3西宮協立脳神経外科病院神経内科, 4兵庫医科大学内科学循環器内科

1Department of Clinical Laboratory, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 2Department of Cardiology, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 3Department of Neurology, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 4Cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【症例】
67歳男性
【主訴】
ふらつき,左視野の見えにくさ
【現病歴】
2013年2月13日から呼吸困難のため他院に入院し,心不全と診断され22日に退院した.翌日左上下肢の動かしにくさ・ふらつきを自覚し転倒.症状改善ないため当院受診し,頭部MRIにて両側に多発性脳梗塞を認め入院となる.
【既往歴】
糖尿病にて他院で通院内服加療中
【入院時現症】
身長166cm,体重64kg,血圧119/67mmHg,脈拍70/min・整,体温36.0℃.
神経学的所見:意識清明,構音障害(−).脳神経系,運動系,感覚系に異常はみられず.
血液検査:Glu 145mg/dl,HbA1c 8.2%,BNP 834pg/ml,TAT 3.9μg/l,Dダイマー6.1μg/mlと異常高値を示した.
胸部レントゲン:異常認めず.
心電図:心拍数58/分の洞調律であり,上室性期外収縮とST-T変化を伴う左室肥大の所見を認めた.
【心臓超音波所見】
心原性脳塞栓症が疑われ,入院後心臓超音波検査を施行.左室の著明な拡大(LVDd 66.3mm,Ds 57.6mm)と,全周性の壁運動の低下を認め,駆出率は28%程度であった.また,左室内の2カ所(心基部の中隔側と,下後壁の心尖部)に可動性を有する質感の異なる異常構造物を認めた.
【経過】
胸腹部CT検査では明らかな腫瘍像は認めず,抗凝固療法を開始.1週間後に施行した心臓超音波検査では,左室拡大と壁運動および駆出率の低下に変化はなかったが,可動性異常構造物は2カ所共に消失していた.
新たな脳梗塞もみられず症状も消失.心不全の原因精査のため転院となる.転院先で施行された冠動脈造影検査では,3枝のいずれにも有意狭窄所見を認めなかった.
【まとめ】
左室内にみられた2つの可動性異常構造物は,抗凝固療法により消失したことからいずれも血栓であったと考えられた.今回われわれは左室の心基部と心尖部の複数カ所に離れて血栓を認めたまれな症例を経験したので報告する.また,心臓超音波検査は可動性血栓の発見および消失の観察に非常に有用であった.