Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例報告1

(S714)

体位変換で右冠動脈血流速度変化を認めた右冠動脈起始異常の一例

A Case of Anomalous Origin of the Right Coronary Artery with a Change of Coronary Flow Velocity by Postural Position

氏野 経士, 桑木 恒, 竹田 光男, 尾崎 健, 尾田 知之

Keiji UJINO, Hiroshi KUWAKI, Mitsuo TAKEDA, Takeshi OZAKI, Tomoyuki ODA

医療法人寿会富永病院心臓病センター循環器科

Cardiovascular Center, Division of Cardiology, Tominaga Hospital

キーワード :

症例は77歳女性.
高血圧と脂質異常のため内服加療されているが,特記すべき既往歴はなし.
2013年8月頃から夜間や起床時に胸部圧迫感を認め,仰臥位から右側臥位に体位変換すると改善するという症状があり,近医より紹介受診された.身体所見,血液検査,心電図,胸部X線写真では特記すべきことなし.経胸壁心エコー図検査では左室収縮能は正常で明らかな壁運動異常を認めず,軽度の大動脈弁閉鎖不全を認めた.冠動脈CT検査では,左冠動脈に有意な狭窄はなく,右冠動脈は左冠尖より起始し,肺動脈との間を走行しており起始部から近位部の軽度扁平化を認めた.運動負荷タリウム心筋シンチ検査では,胸部症状の出現はなく,有意な虚血所見を認めなかった.冠動脈造影にてCT所見と同様に右冠動脈が左冠尖から左冠動脈の前方から起始しており,やや扁平化していることが確認された.安静時の胸部症状であるため,引き続きアセチルコリン負荷による冠攣縮誘発試験を行ったところ,右冠動脈ではカテーテルの起始部への選択が不十分なためか,軽度の胸部症状はあるが50%以下の狭窄のみで有意な攣縮を誘発できなかったが,左冠動脈ではアセチルコリン100μg投与時に胸痛を認め,左冠動脈前下行枝がびまん性に90%狭窄を来たし,冠攣縮陽性と診断した.以上より右冠動脈起始異常を伴う冠攣縮狭心症と診断し,カルシウム拮抗剤と亜硝酸剤を開始した.以降胸部症状は軽減している.また体位変換により症状の軽減を認めるため,経食道心エコー図検査にて左右冠動脈近位部の血流速度を観察したところ,左冠動脈近位部の冠動脈血流速度は47cm/sで体位変換では大きな変化を認めなかったが,右冠動脈近位部の冠動脈血流速度は左側臥位44cm/s,仰臥位45cm/s,右側臥位58cm/sと,右仰臥位にて明らかな速度増大を認めた.
【考察】
冠動脈起始異常は冠動脈奇形の一種であり,冠動脈に器質的な狭窄病変を認めないにもかかわらず,重篤な心筋虚血が生じ,狭心症や急性心筋梗塞,失神や突然死などの症例が報告されている.頻度は0.1から0.3%であり,本邦ではそのうち78.6%は右冠動脈が左冠尖から起始しているという報告がある.また本症例も左冠尖より起始する右冠動脈があり,冠攣縮性狭心症を合併していた.さらに体位による症状変化を来たしており,経食道心エコー図検査にて右冠動脈近位部の体位変換による冠血流速度変化を観察可能であった.詳細な機序は不明であるが右側臥位での右冠動脈血流増大は症状改善に関与する可能性が考えられる.