Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器2

(S689)

精索静脈瘤の術前診断における超音波断層法の役割

The Role of Ultrasound in Prediction of the Outcome of Varicocelectomy

横山 裕1, 宮嶋 哲匡2, 中山 一郎3, 東恩納 高史4, 田丸 俊三5, 石田 浩三3, 田中 正利6

Hiroshi YOKOYAMA1, Tetsumasa MIYAJIMA2, Ichiro NAKAYAMA3, Takashi HIGASHIONNA4, Shunzo TAMARU5, Kozo ISHIDA3, Masatoshi TANAKA6

1横山病院泌尿器科, 2福岡大学筑紫病院泌尿器科, 3田川市立病院泌尿器科, 4大牟田天領病院泌尿器科, 5薬院ひ尿器科病院泌尿器科, 6福岡大学医学部泌尿器科

1Department of Urology, Yokoyama Hospital, 2Department of Urology, Fukuoka University Chikushi Hospital, 3Department of Urology, Tagawa Municipal Hospital, 4Department of Urology, Omuta Tenryo Hospital, 5Department of Urology, Yakuin Urogenital Hospital, 6Department of Urology, Fukuoka University Faculty of Medicine

キーワード :

【緒言】
精索静脈瘤に対する外科的治療は陰嚢痛などの自覚症状を認める症例のみならず,男性不妊症に対し精液所見の改善を期待する症例にも施行されている.しかし,その診断は腹圧負荷時の視診や触診でのGrade分類が主で,超音波断層法(以下US)やドプラ聴診装置などが補助的診断法として用いられているが,その診断基準は客観性に乏しいと言わざるを得ない.また,その病態は明らかにされていない点も多く,手術適応についても一致した見解は得られていないのが現状と考えられる.われわれは精索静脈瘤の診断においてUSを積極的に活用し,カラードプラ法による腹圧負荷時の精索静脈の逆流所見のみならず,腹圧負荷時の精索静脈径も計測し,治療方針を決定する際の判断材料の一つとして利用してきた.今回われわれは精索静脈瘤の診療,特に手術適応の決定におけるUSの役割,特に腹圧負荷時の精索静脈径計測の有用性について検討した.
【対象と方法】
対象は2010年10月から2013年8月末までの間に福岡大学病院泌尿器科またはその連携施設において精索静脈瘤と診断され,顕微鏡下低位内精静脈結紮術を施行した29例のうち,術前にUSを施行し,術後の治療効果判定が可能であった17例.臨床的背景を調査し,術前のUSでは高周波数リニア型探触子(7.5〜10MHz)を用い,腹圧負荷時の精索静脈径を計測し,カラードプラ法で腹圧負荷時の精索静脈における逆流の程度を観察した.治療効果判定は,症状を有する症例では術後の症状消失の有無,男性不妊症の症例では術前および術後3か月以上経過した時点での精液検査(精液量,精子濃度,運動率)で評価した.われわれの施設では手術の適応を,原則として,精索静脈径2.5mm以上またはカラードプラ法による逆流所見が精巣尾部のレベルまで認められるものとした.
【結果】
平均年齢は26.1歳(11-46歳)で,患側は左9例,両側8例であった.手術目的は陰嚢痛など自覚症状の改善が12例,男性不妊症の治療が5例であった.US計測による術前の腹圧負荷時の平均左精索静脈径は3.5mmで,両側手術症例の平均右精索静脈径は3mmであった.平均手術時間は左のみの症例で89分,両側の症例で159分であった.術後の合併症は創感染と精巣上体炎をそれぞれ1例ずつ認めたが,抗菌剤および消炎鎮痛剤の内服治療のみで速やかに改善した.陰嚢痛や違和感などの自覚症状は12例中11例(92%)で消失し,5例中3例(60%)で術後の精液所見が改善した.術後の経過観察中に陰嚢水腫などの合併症や精索静脈瘤の再発を認めた症例はなかった.
【結論】
今回のわれわれの検討では術前USの所見のみで手術の適応を決定しても,その治療効果はこれまでの諸家らの報告と同等であった.精索静脈瘤の診断にUSを用いることにより,精索静脈径の計測が可能となり,特に腹圧負荷による変化を客観的に評価できた.精索静脈径の計測は絶対値として数値化することにより客観的な評価が可能となるため,その有用性は高いと思われる.また,USは術後の合併症や再発の発見にも優れており,術後の経過観察にもその有用性が発揮されるものと考えられる.今後,症例の積み重ねにより,精索静脈瘤における統一されたUS診断基準やUS所見によるgrade分類が提唱され,手術適応などを含む診療ガイドラインの策定が期待される.