Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S687)

US測定前立腺体積はデガレリクス使用前立腺癌CAB療法での排尿改善予測因子となり得る

Initial prostatic volume by trans-abdominal US can predict of the urinary symptom improvement in prostate cancer CAB therapy using Degarelix

徳光 正行1, 山口 聡1, 金子 茂男1, 増井 則昭1, 横田 紗緒里2, 和田 絵里2, 神崎 こずえ2, 水永 光博3, 石田 裕則1

Masayuki TOKUMITSU1, Satoshi YAMAGUCHI1, Shigeo KANEKO1, Noriaki MASUI1, Saori YOKOTA2, Eri WADA2, Kozue KANZAKI2, Mituhiro MIZUNAGA3, Hironori ISHIDA1

1仁友会北彩都病院泌尿器科, 2仁友会北彩都病院臨床検査科, 3仁友会泌尿器科内科クリニック泌尿器科

1Department of Urology, Kitasaito Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Kitasaito Hospital, 3Department of Urology, Jinyukai Clinic

キーワード :

【緒言】
2012年10月,本邦初の前立腺癌治療薬GnRH antagonist:デガレリクスが発売された.従来のLHRH agonistに比べ,投与時のtestosterone surgeがなく,速やかにtestosterone値(以下T値)を低下させる特徴がある.欧米での単剤投与治療成績では,IPSS-S値が12以上,PSA値が50ng/ml以上,骨転移を有する症例での有効性が示され,投与が推奨されている.しかし邦人の治療成績は2012年に報告された単剤投与第II相試験結果しかなく,未だデガレリクス治療の臨床的位置付けは明確ではない.我々は2013年10月の第51回日本癌治療学会において,邦人の新規前立腺癌25例に対するデガレリクスとビカルタミド併用CAB療法の初期治療成績を初めて報告し,デガレリクス単剤投与や従来のLHRH agonistを用いたCAB療法を上回るPSA値制御効果と,治療開始時のIPSS-S値が10以上,PSA値が30ng/ml以上の症例における,有意な排尿症状改善効果を報告した.今回我々は,US計測による前立腺体積(以下PV)に着目し,治療開始時のPVや治療によるPV縮小率と,制癌効果や排尿機能改善の関連について検討した.
【方法】
対象は2013年12月現在,デガレリクスとビカルタミド併用CAB療法を施行している30例.治療前,治療後4,12,24週目の,PV,PSA値,T値,残尿量(以下RU),IPSS-S値とL値,OABSS値,最大尿流率(以下MFR),平均尿流率(以下AFR)の経時的変化,治療の有効性について評価した.
【結果】
全30例の背景は,平均73.8歳,PSA中央値21.0ng/ml,T中央値4.4ng/ml,PV中央値28.5cc,限局癌14例,局所浸潤癌9例,転移癌7例,GS 6が8例,7が6例,8以上が16例であった.治療開始から2,4,12,24週目のT値低下率はそれぞれ-94.3,-94.6,-95.7,-95.3%と,本邦の単剤第II相試験結果と同等であり,PSA値低下率はそれぞれ-64.7,-85.8,-97.8,-99.4%と,前述の試験結果の2週目-62.5,4週目-80.1%を上回る改善が得られていた.24週目までにPSA再燃例はなかった.次にPVが30cc以上(n=14)と30cc未満(n=16)の2群について検討した.前者は平均年齢が高く(75.4:72.4),限局癌症例が少なく(4:10),局所浸潤癌症例が多く(7:2),18カ所生検での癌検出core数が多い(9.8:7.4)傾向にあり,またPSA値は有意に高く(中央値54.1:11.2),PVのみならず担癌量も多い可能性が推測された.この2群間において,T値とPSA値,RUの低下率には24週目までに有意差は認められなかった.PV縮小率は,12週目-36.2:-31.6,24週目-42.3:-40.0と前者で高い傾向があり,IPSS-S,L,MFR,AFRにおいては,2群間に4週目から有意差が確認され,24週目でSが-5.4:-3.9,Lが-2.1:-0.6,MFRが+4.1:+1.2,AFRが+2.2:+0.7と,いずれもPV30cc以上の群で有意な改善が認められた.
【結論】
デガレリクスとビカルタミド併用CAB療法により,その単剤治療や従来のCAB療法に比べ,速やかなPSA値の低下,排尿症状と排尿機能の改善が認められた.特にPVが30cc以上の症例において,24週目までの排尿症状と排尿機能の改善が顕著であった.デガレリクス使用CAB療法が,従来の治療より腫瘍の急速制御が可能なことから,担癌量が多いと考えられる症例の腫瘍制御のみならず排尿機能を早期から改善すると推測された.また,デガレリクスが膀胱頸部から前立腺部尿道に分布するGnRH受容体を直接阻害し,通過障害を改善させるとの報告もあり,受容体も多いであろうPVの大きな症例に,この阻害効果が顕著に現れる可能性も考えられる.今後,USから得られる検査データの長期蓄積と検証が,単独治療や従来のCAB療法とのRCT実施とともに,邦人のデガレリクス治療の位置付けを明確にするために重要であると考える.