Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 血管
大動脈・症例

(S683)

超音波検査が診断の契機となったコレステロール塞栓症の一例

Usefulness of Ultrasonography Diagnosed of Cholesterol Crystal Embolization: A case report

中原 弓恵1, 藤田 圭二1, 金本 優1, 岡崎 麻利1, 三宅 ひとみ1, 中山 弘美1, 正木 修一1, 宗政 充2, 松原 広己2, 福岡 晃輔3

Yumie NAKAHARA1, Keiji FUJITA1, Yu KANAMOTO1, Mari OKAZAKI1, Hitomi MIYAKE1, Hiromi NAKAYAMA1, Shuuichi MASAKI1, Mitsuru MUNEMASA2, Hiromi MATSUBARA2, Kousuke FUKUOKA3

1国立病院機構岡山医療センター臨床検査科, 2国立病院機構岡山医療センター循環器科, 3国立病院機構岡山医療センター腎臓内科

1Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Okayama Medical Center, 2Department of Cardiology, National Hospital Organization Okayama Medical Center, 3Department of Nephrology, National Hospital Organization Okayama Medical Center

キーワード :

【はじめに】
コレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization:CCE)は,粥状硬化症を大動脈に有している患者に発症する疾患である.粥状硬化症病巣のプラークが破綻し,それが中小動脈に詰まることにより,腎臓をはじめ全身の臓器にさまざまな障害をもたらし,最も多いのは,Blue-toeに代表される皮膚の病変であるといわれる.一般的にカテーテルなどの血管内操作や心血管系の外科手術を行ったときに10〜20%の頻度で発症するといわれているが,原因不明の特発性CCEも時に認められる.今回我々は,血管内操作や心血管系の外科手術などの誘因なく発症し,超音波検査が診断の契機となったCCEの一例を経験したので報告する.
【症例報告】
症例は70歳代男性,皮膚筋炎にて当院皮膚科でプレドニゾロンを投与中であった.外来経過観察中に徐々にs-Crの上昇(1.3から1.8mg/dlに上昇)を認めたため,当院腎臓内科に紹介,精査目的で入院となった.入院時s-Crは2.5mg/dlまで上昇していた.腎血流超音波検査を施行したところ,両腎ともに血流が乏しく末梢血管抵抗が高かった.また,腹部大動脈に可動性を有するプラークを多数認めた.下肢趾端部がblue toe様で,足底に網状皮斑(livedo)を認めたためCCEを疑い皮膚生検を施行したところ,CCEを疑わせる所見を認めた.すでにプレドニゾロン10mgを服用していたため,20mgに増量して加療を行ったところ,s-Crは2.05mg/dlを腎機能の改善を認めた.
【考察】
本症例は腹部大動脈の可動性プラークから,コレステロール結晶が飛散しCCEを葉称したものと考えられる.CCEの多くは,既往にカテーテルなどの血管内操作や心血管系の外科手術を認める場合が多いが,本症例にはそのような既往は認めず,また腹部大動脈瘤の併存も認めなかった.文献的には,誘因を認めない特発性のCCEは10%前後と稀であり,貴重な症例と考えた.
【結語】
今回我々は超音波検査が診断の契機となったコレステロール塞栓症の一例を経験した.CCEのコレステロール結晶が飛散源の検索に超音波検査は有用であると考える.