Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 血管
大動脈・症例

(S682)

コントラストエコー法による腎循環評価の試み

Assessment of renal circulation by contrast ultrasonography

小室 薫1, 早乙女 和幸2, 横山 典子2, 渋谷 美咲2, 小室 一輝3, 広瀬 尚徳1, 安在 貞祐1, 伊藤 一輔1, 米澤 一也4

Kaoru KOMURO1, Kazuyuki SOUTOME2, Noriko YOKOYAMA2, Misaki SHIBUYA2, Kazuteru KOMURO3, Masanori HIROSE1, Teisuke ANZAI1, Kazusuke ITO1, Kazuya YONEZAWA4

1国立病院機構函館病院循環器科, 2国立病院機構函館病院臨床検査科, 3国立病院機構函館病院外科, 4国立病院機構函館病院臨床研究部

1Department of Cardiovascular Medicine, National Hospital Organization Hakodate National Hospital, 2Clinical Laboratory, National Hospital Organization Hakodate Hospital, 3Department of Surgery, National Hospital Organization Hakodate Hospital, 4Department of Clinical Research, National Hospital Organization Hakodate Hospital

キーワード :

【背景】
近年,腎機能障害は心血管疾患のリスクとなり,心不全患者の予後を悪化させる要因となることがわかってきた.心血管疾患治療の立場からの腎循環評価が求められるようになったが,その方法は確立していない.超音波造影剤を用いた腎コントラストエコー法は非侵襲的に腎の血流動態を評価しうる方法として従来から腎腫瘍の質的診断や移植腎の機能評価を目的として臨床応用されてきた.しかし染影強度の個体差や音場不均一の影響を強く受けるため,本法による腎循環評価は定性的評価にとどまるのが現状である.一方過去に,心筋コントラストエコーを用い,心筋の染影輝度を左室内腔の輝度で補正することで単位体積当たりの心筋血液量を推定する方法の報告がある.
【目的】
健常腎症例の腎コントラストエコー法で,個体差や音場の不均一を克服して腎実質の血液量を評価する方法を応用した腎循環評価を行い,その妥当性を検討する.
【方法】
対象は乳がん術後症例4例(年齢65歳±15歳)と健常ボランティア3例(年齢41歳±9歳).当院倫理委員会の承認を得て,乳がん症例では肝転移検索目的の肝コントラストエコー検査の際に腎コントラストエコー法を施行した.装置は東芝社製Aplio MXと3.5MHzコンベックスプローブを用いた.0.075ml/kgのペルフルブタン(ソナゾイド)をボーラス静脈投与し,MI 0.20の低音圧で連続送信による染影を行った.腎皮質,髄質およびその近傍の区域動脈での染影輝度をdBで計測し,ファーストパスの時間−輝度曲線(TIC)を作成,腎実質への造影剤到達時間および輝度がピークに達するまでの時間を求めた.また,TICピーク時での腎皮質および髄質の輝度から区域動脈の輝度を差し引いた相対輝度を求めた.これは,腎実質輝度と動脈内輝度のdB値の差が各々の造影剤密度の比を表すことから,100%血液である区域動脈の輝度をレファレンスにすることにより腎実質の単位体積当たりの血液量を反映する指標と考えられる.
【結果】
健常7例では,超音波造影剤投与後から19.4±3.2秒で皮質が染まり始め,23±3.4秒で皮質の染影ピークに達した.髄質は皮質よりやや遅れ,21.3±3.6秒で染まり始め25.1±4.0秒でピークに達した.髄質は皮質に近い外層から内部へとゆっくり染影され,染影強度は皮質より弱かった.TICピークでの皮質輝度は-29±7.4dBと個体間でのばらつきが大きかったのに対し,近傍区域動脈の輝度で補正した相対皮質輝度は-9.0±1.7dBと個体間差が大きく軽減した.一方髄質輝度は-34.9±6.6dBであったのに対し相対髄質輝度は-14.9±3.6dBと,ばらつきは軽減したが髄質内での染影の不均一性が個体差に影響を及ぼすと考えられた.
【結論】
腎実質の輝度を区域動脈の輝度で補正する相対輝度は,染影強度の個体差を克服し,腎実質の単位体積当たりの血液量を反映する指標として腎コントラストエコー法に応用可能である.腎コントラストエコー法は非侵襲的に腎循環を評価しうる方法としてその有用性が期待できると考えられた.