中野 恵一^{1, 2}, 星 信大², 岡山 洋和^{1, 2}, 福島 俊彦^{1, 2}, 鈴木 悟¹, 鈴木 眞一¹

Keiichi NAKANO^{1, 2}, Nobuhiro HOSHI², Hirokazu OKAYAMA^{1, 2}, Toshihiko FUKUSHIMA^{1, 2}, Satoru SUZUKI¹, Shinichi SUZUKI¹

¹福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座, ²福島県立医科大学器官制御外科学講座

¹Department of Thyroid and Endocrinology, Fukushima Medical University, ²Department of Organ Regulatory Surgery, Fukushima Medical University

キーワード :

当科で経験した特異な超音波所見を呈した肺腺癌の甲状腺転移症例2例を提示する．
【症例1】
40歳台，男性．2004年に肺腺癌に対し右肺上葉切除術施行（T1N0M0　stage1A）．2007年に局所再発に対し，化学療法（Carboplatin＋Paclitaxel）を施行した．2010年3月に急速に進行する頸部腫脹を自覚した．頚部超音波では，甲状腺両葉を置換するような低エコー性結節を認め，CNBにて腺癌の診断．EGFR遺伝子変異陽性から，肺腺癌からの転移と診断した．再度化学療法を施行し，甲状腺内の結節の縮小を認め，外来にて経過観察中である．
【症例2】
70歳代，女性．2001年12月に肺腺癌に対して左肺下葉切除術施行．2002年に多発肺内転移再発あり．以後化学療法を継続していた．2010年8月PET-CTにて甲状腺右葉にSUVmax 5.6のFDG集積を認めた．頸部USにて，甲状腺右葉に境界不明瞭で内部に高輝度エコーspotを伴う低エコー結節と右外側区域のリンパ節腫脹を認めた．右葉結節からのCNB施行し，肺腺癌の甲状腺転移と診断した．肺癌に対する化学療法を継続したが，甲状腺転移判明後約3年で呼吸不全にて原病死した．
甲状腺癌はほとんどが原発性であり，他臓器からの転移は稀である．甲状腺への転移の頻度は1.3〜24％との報告があるが，すでに遠隔転移が成立していることから予後不良と考えられる2症例を比較し，文献的な考察も加えて報告する．