Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 甲状腺
FAPおよび転移性甲状腺癌他

(S663)

長期経過観察に超音波検査が有用であった家族性大腸腺腫症の1例

Long-term follow-up familial adenomatous polyposis(FAP)by ultrasonography: Report of a case

櫻井 健一1, 2, 藤崎 滋2, 原 由起子1, 2, 長島 沙樹1, 2, 鈴木 周平1, 2, 前田 哲代1, 2, 富田 凉一2, 平野 智寛1, 榎本 克久1, 天野 定雄1

Kenichi SAKURAI1, 2, Shigeru FUJISAKI2, Yukiko HARA1, 2, Saki NAGASHIMA1, 2, Shuhei SUZUKI1, 2, Tetsuyo MAEDA1, 2, Ryouichi TOMITA2, Tomohiro HIRANO1, Katsuhisa ENOMOTO1, Sadao AMANO1

1日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科分野, 2医療法人社団藤崎病院外科

1Department of Breast and Endocrine Surgery, Nihon University School of Medicine, 2Department of Surgery, Fujisaki Hospital

キーワード :

家族性大腸ポリポーシス(Familial Adenomatous Polyposis: FAP)は大腸ポリープ以外にも,胃,十二指腸・小腸,肝臓,胆管,膵臓,甲状腺,副腎,脳,骨,皮膚などに腫瘍が発生することが知られている.また,胃や十二指腸のポリープの多発や,小児で肝芽腫が発症することがある.今回,我々はFAPに対する予防的結腸切除後に認めた肝細胞癌および甲状腺乳頭癌の1例を経験し,その経過観察に外来で簡便に施行できる超音波検査が有用であったので報告する.
症例は38歳,男性.15歳時にFAPで予防的結腸切除を受けた.その後,23歳時に超音波検査により,肝腫瘍が発見され,肝部分切除を受けたところ,病理組織診断は肝細胞癌であった.その後,胃底腺ポリープを指摘され経過を観察されていた.35歳時に施行した超音波検査および造影CT検査で甲状腺右葉に腫瘤性病変を指摘され,当科を紹介・受診した.甲状腺腫瘍の穿針吸引細胞診はClass Vであり,乳頭癌が疑われた.患者さんと相談の結果,甲状腺亜全摘+頸部リンパ節郭清術(D2a)を施行した.病理組織診断は,甲状腺乳頭癌,T3,N1b(8/16),M0=stage Iであった.その後,経過を観察していたが,右no6リンパ節に腫大を認め,超音波検査で経過を観察していたところ,徐々に増大してくるため,38歳時に残存甲状腺全摘術+リンパ節再郭清術を施行した.
FAPには肝腫瘍や甲状腺癌が併発することが知られている.しかしながら,肝腫瘍は肝芽腫が発生することが多いとされ,本症例のように肝細胞癌が発生する報告は少ない.また,FAPに併発する甲状腺癌に対する治療方針および経過観察の期間などは,確立されているとはいえず,今後の症例の蓄積と治療成績の蓄積が待たれる.