Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 甲状腺
エラストグラフィ他

(S660)

甲状腺疾患におけるShear Wave Elastography(Virtual Touch IQ)の使用経験

Evaluating availability of shear wave elastography(Virtual Touch IQ)to diagnose thyroid disease

中野 賢英, 福成 信博, 難波 北人, 坂上 聡志

Masahide NAKANO, Nobuhiro FUKUNARI, Hokuto NANBA, Satoshi SAKAUE

昭和大学横浜市北部病院外科

General Surgery, Showa University Northern Yokohama Hospital

キーワード :

近年の超音波技術の進歩により,組織弾性を評価するElastographyが甲状腺領域においても用いられ始め,腫瘤性病変の器質的評価を行う手法として一般的となってきた.従来のStrain Elastographyは,標的組織と周囲組織とのひずみを相対的に評価し硬さを画像化してきたが,その特性により同一症例内での再現性,他症例との比較という点で信頼性が十分ではないという難点があった.そこで注目されたのがShear Waveを用いたElastographyであり,ARFI(音響放射圧)にて発生させたShear Wave(剪断弾性波)が組織内を通過する際の速度を測定することで,その硬さを定量的に評価しようというものである.Shear Wave Elastographyでは,術者依存性が少なく組織弾性を定量評価できるという点で,従来のStrain Elastographyの難点を克服できると考えられている.測定速度を定量的に測定しImagingを行うVelocity mode,測定速度の均一性を測定し信頼性を評価するQuality modeを備えたVirtual Touch IQを搭載した,SIEMENS社のACUSON S3000を用いて評価を行った甲状腺疾患症例について供覧し,報告する.
症例の内訳は乳頭癌6例,濾胞性腫瘍3例,バセドウ病3例,橋本病3例,正常甲状腺2例である.腫瘍性疾患においては,腫瘍部位及び正常甲状腺部位それぞれで複数か所(1〜15か所)のVelocityを測定し,その平均を求めた.またび慢性腫大を呈する疾患では,甲状腺内の複数か所(3〜14か所)のVelocityを測定し,その平均を求めた.いずれもQuality modeにて測定速度の信頼性の高い部位のみを選択した.それぞれのVelocity(m/s)は乳頭癌腫瘍部3.78±0.18,正常部2.98±0.07,濾胞性腫瘍部2.79±0.24,正常部3.00±0.16,バセドウ病2.25±0.15,橋本病3.50±0.28,正常甲状腺(乳頭癌,濾胞性腫瘍症例の正常部を含む)2.86±0.07であり,ばらつきは少なく再現性は高いと考えられる.正常甲状腺と乳頭癌腫瘍部,濾胞性腫瘍部,バセドウ病,橋本病間でのStudent’s t-testによる評価では,乳頭癌P=4.84E-06,濾胞性腫瘍P=0.71,バセドウ病P=0.0001,橋本病P=0.004であり,P≦0.05を有意とすると,乳頭癌,バセドウ病,橋本病では正常甲状腺組織と比較し有意にVelocityの差があるといえた.
Shear Wave Elastographyの利点である,組織弾性を定量的に測定可能である点をより活用するには,症例を蓄積することで各種疾患におけるVelocityの基準値を作成することが必要と思われる.その上で,病理組織との相互評価により腫瘍内部の性状,腫瘍皮膜及び周囲の性状を評価できるようになれば,現在困難である甲状腺濾胞性腫瘍の術前評価に関しても有効な検査となりえる可能性がある.