Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
elastography

(S652)

乳腺腫瘤性病変の良悪性鑑別に対するVTIQ(Virtual Touch IQ)の有用性

Usefulness of VTIQ(Virtual Touch IQ)for malignant tumors of breast nodule

磯部 幸子1, 戸崎 光宏2, 松本 沙知子1, 斎藤 雅博3

Sachiko ISOBE1, Mitsuhiro TOZAKI2, Sachiko MATSUMOTO1, Masahiro SAITO3

1亀田京橋クリニック臨床検査室, 2亀田京橋クリニック画像センター, 3シーメンス・ジャパン株式会社シーメンス・ジャパン株式会社

1Clinical Laboratory, Kameda Kyobashi Clinic, 2Image Center, Kameda Kyobashi Clinic, 3Siemens Japan K.K Healthcare, Siemens Japan K.K Healthcare

キーワード :

【はじめに】
現在,乳腺エラストグラフィの定性的判定法は用手的圧迫もしくは音波放射力を利用し音響的な圧迫により歪みを画像化する方法が存在する.また定量的判定は音波放射力で組織にShear waveを発生,伝搬させその伝播速度を測ることにより硬さを評価する方法がある.Virtual Touch Quantification(VTQ)ではshear wave伝搬速度(SWV)を測定し,硬い組織ほど伝搬速度が速く,高値に表示される.しかし腫瘤内部,特に悪性病変の内部測定は困難な場合が多い.この欠点を克服する技術として開発されたのがVirtual Touch IQ(VTIQ:ACUSON S3000 Siemens社製)である.VTIQはVTQの一点測定に対し,ROIの中で発生したSWVを多点測定し速度分布をカラーマッピングイメージとして表示している.また4つのmode表示がありSWVの速度分布をカラー表示するVelocity mode,計測速度の信頼性を評価するQuality mode,そしてTime,Displacement modeがある.2013年にVTIQの良悪性の鑑別に対する有用性が報告されているが.今回症例数をさらに加えて腫瘤性病変に対するVTIQの評価をした,
【対象と方法】
2012年6月から2013年1月に病理学的診断の得られた,もしくは2年間の経過観察が施行された充実性腫瘤342例を対象とした.まずSWVの評価の信頼性を確認するためにQuality modeを用いてROI全体の色調(信頼性が高い領域は緑,低い領域は黄,赤)を視認した.次にVelocity modeで腫瘤内部のSWVが最も速い領域(赤い領域)を視認し,計測カーソル(2mm×2mm)を移動させてSWVの計測をした.そしてSWVのカットオフ値はROC曲線から分析しVTIQの感度,特異度,正診率を算出した.
【結果】
病理組織結果は,良性病変が149病変(線維腺腫61例,乳腺症11例,乳管内乳頭腫7例,腺腫1例,過誤腫2例,異型乳管過形成2例,乳腺偽血管腫様過形成1例,膿瘍2例,細胞診で良性が6例,2年間の経過観察により著変が認められず良性と判定された56例),乳癌は193病変(非浸潤性乳管癌22例,浸潤性乳管癌148例,浸潤性小葉癌7例,粘液癌7例,浸潤性微小乳頭癌5例,充実性乳頭癌3例,アポクリン癌1例)であった.腫瘤の大きさは良性が平均13.9mm(3.6mm−120.0mm),悪性は平均18.9mm(2.5mm−55.6mm)であった.SWVは全ての腫瘤で内部の測定が可能で良性の平均は2.77m/s(0.97m/s−8.36m/s),悪性は平均6.63m/s(2.00m/s−8.40m/s)(p<0.0001)であった.カットオフ値を4.05 m/sとすると感度,特異度,正診率は87.6%(169/193),90.6%(135/149),88.9%(304/342)であった.
【考察】
VTIQでは全例で腫瘤内部の計測が可能であった.さらにSWVが悪性は良性よりも高値(p<0.0001)でカットオフ値を4.05 m/sの場合,感度87.6%(169/193),特異度90.6%(135/149),正診率88.9%(304/342)であった事は良悪性の鑑別に有用な指標であると考える.しかし偽陽性が14病変(線維腺腫6例,乳腺症1例,乳管内乳頭腫3例,膿瘍1例,良性3例),偽陰性が27病変(非浸潤性乳管癌7例,浸潤性乳管癌17例,浸潤性小葉癌3例)認められ,特に偽陰性の27病変中20病変には浸潤癌が含まれるため更なる検討が必要と考える.
【結語】
VTIQは良悪性の鑑別に有用と考える.しかし偽陰性,陽性病変が存在するため評価方法の更なる検討が必用と考える.