Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
妊娠初期

(S635)

胎児染色体異常の超音波マーカーの役割に関する研究

Study about trend of prenatal diagnosis for chromosomal abnormality

仲村 将光, 長谷川 潤一, 濱田 尚子, 瀧田 寛子, 三科 美幸, 新垣 達也, 松岡 隆, 市塚 清健, 関沢 明彦

Masamitsu NAKAMURA, Junichi HASEGAWA, Shoko HAMADA, Hiroko TAKITA, Miyuki MISHINA, Tatsuya ARAKAKI, Ryu MATSUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学産婦人科学講座

Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

【目的】
2013年4月よりNon-invasive prenatal genetic testing(NIPT)の導入をきっかけに妊婦の出生前診断に対する意識が高まっている.染色体異常の出生前診断は,Nuchal translucency(NT)を含めた超音波マーカーや母体血清マーカー,NIPTといった非確定的検査と,絨毛採取および羊水穿刺による確定的検査と多岐にわたり,それぞれの検査精度や特徴を正しく理解した上で,出生前診断を選択することが重要である.2012年の我々の検討では初期の超音波マーカーによるリスク評価希望者は13%であったが,今回,NIPTの開始後に超音波マーカーの検査選択率が下がっているのではないかと考え,出生前検査の希望者動向を明らかにする目的で本研究を行った.
【方法】
当院で分娩する妊婦は,紹介例を除いて,妊娠11-13週に超音波検査による形態異常の確認を行っている(初期外来).初期外来受診前に各種出生前診断についての概要を記載したパンフレットを配布し,初期外来受診時に検査の希望表を持参させている.染色体異常のリスク推定を希望する者には,初期外来の検査前にスクリーニングや診断検査に関する遺伝カウンセリングを行って,自律的な意思決定を促している.当院での現状の選択肢は,NT計測を中心とした超音波マーカーによるリスク評価,クワドロプルテスト,NIPTといったスクリーニング検査や,羊水および絨毛採取による確定的検査である.今回,妊婦が事前に希望した検査と,遺伝カウンセリングによって最終的にどのような検査が選択されていたのか調査した.2013年4月から10月に初期外来を受診した単胎妊婦を対象とし,他院より出生前診断のために紹介された症例は除外した.本研究は,当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
対象は,570症例であった.事前の希望表による出生前検査希望の頻度はそれぞれ,希望なし71.1%(405), NT 13.9%(79),クワドロプルテスト2.5%(14), NIPT 9.3%(53),侵襲的検査3.3%(19)であったが,遺伝カウンセリング後には希望なし74.9%(427), NT 10.5%(60),クワドロプルテスト1.6%(9), NIPT 8.9%(51),侵襲的検査4.0%(23)であった.
【結論】
胎児染色体異常の出生前診断への関心が高まっている中,出生前診断を希望する妊婦はいまだ28.9%であった.NTによる超音波マーカーを希望する妊婦は,NIPT導入前に比べてほぼ同等であった.事前に染色体異常について出生前診断を希望したものの中で,非確定的検査は25.6%を占めたが,遺伝カウンセリングによって確定的検査への変更した者が2.7%,出生前診断の希望を取り消した者が15.1%存在した.このことから,検査前に遺伝カウンセリングを行い,検査目的や精度・限界についての理解を促進することの重要性が示された.