真嶋 允人, 天雲 千晶, 田中 圭紀, 石橋 めぐみ, 伊藤 恵, 花岡 有為子, 金西 賢治, 田中 宏和, 秦 利之

Masato MASHIMA, Chiaki TENKUMO, Tamaki TANAKA, Megumi ISHIBASHI, Megumi ITO, Uiko HANAOKA, Kenji KANENISHI, Hirokazu TANAKA, Toshiyuki HATA

香川大学医学部附属病院周産期科女性診療科

Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University School of Medicine

キーワード :

【諸言】
Uterine synechiaは子宮内掻破や手術，流産，子宮内膜症などを原因として発生し，妊娠中に様々な合併症を引き起こすとの報告がある1）,2）．今回我々は，エコーとMRIによって妊娠中に診断され，胎勢異常のため帝王切開を施行したuterine synechiaの1例を経験したので報告する．
【症例】
34歳女性，1妊0産で21歳の時にD&Cの既往があった．妊娠28週時，他院で子宮下部のuterine synechiaを指摘され，精査のため当科紹介となった．初診時の2次元超音波および3次元超音波により，子宮前壁と後壁を架橋するように存在する膜状のsynechiaが描出され，それによって胎児は子宮底に押しやられていた．synechiaの左右には羊膜腔が下垂しており，臍帯下垂も認められた．また，ときに下肢の脱出もみられた．HDliveは従来の3次元超音波と比較して，よりリアリティのある画像を得ることができた．胎児，胎盤に明らかな形態異常は認められなかった．妊娠35週で施行したMRIでも同様の所見を確認し，胎勢異常に対する選択帝王切開を行う方針となった．経腹エコー上，子宮下節は十分伸展されており通常の下部横切開によるアプローチが可能と思われた．妊娠37週で帝王切開を施行した．子宮筋層切開後，synechiaの左右の欠損口より2つの胎胞が認められ，片側の胎胞を破膜したところ膜様のsynechiaが同定された．synechiaは容易に結紮切離され，2380gの健康な女児を娩出した．
【結論】
妊娠中に発見されたuterine synechiaに対して，3次元エコーとMRIを組み合わせることによって，妊娠経過中の子宮内の状態について正確な評価を行うことができた．妊娠中の子宮内異常の立体的な描出において，3次元超音波，HDliveおよびMRIの有用性が示された．
【参考文献】
1）Methodius G. Tuuli, Anthony Shanks, Lisa Bernhard, et al. Uterine Synechiae and Pregnancy Complications. Obstet Gynecol. 2012;119（4）:810-4.
2）Sato M, Kanenishi K, Hata T, et al. Antenatal 3-D sonographic features of uterine synechia. J Obstet Gynaecol Res. 2013;39（1）:395-8.