Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(1)

(S619)

3D/4D超音波にて診断された胎児腹腔内臍帯静脈瘤

Three-/four-dimentional sonographic diagnosis of fetal intra-abdominal umbilical vein varix

佐藤 美樹, AUSTRIA Bernadette s, 伊藤 恵, 西澤 知佳, 新田 絵美子, 森 信博, 花岡 有為子, 金西 賢治, 田中 宏和, 秦 利之

Miki SATO, Bernadette s AUSTRIA, Megumi ITOU, Chika NISHIZAWA, Emiko NITTA, Nobuhiro MORI, Uiko HANAOKA, Kenji KANENISHI, Hirokazu TANAKA, Toshiyuki HATA

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学

Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University School of Medicine

キーワード :

胎児腹腔内臍帯静脈瘤(Fetal intra-abdominal umbilical vein varix; FIUV varix)は部分的な臍帯静脈の拡張であり,つながる臍帯静脈より50%以上の幅,あるいは最大径が9mm以上と定義される.今回われわれは,3D/4D超音波にて診断されたFIUV varixを紹介する.
患者は30歳,1妊0産の日本人女性である.両側側脳室の脈絡叢嚢胞を指摘され妊娠20週3日に当院紹介初診した.2D超音波にて両側の脈絡叢嚢胞が確認され,それ以外の異常は指摘されなかった.27週3日に再検すると当初指摘されていた脈絡叢嚢胞は消えていたが,胎児腹壁と胎児肝臓下縁との間に臍帯静脈の拡張(11.5mm)を認めた.3Dパワードプラ(3D HD-flow)のGlass body mode(Volson E8; GE medical Systems, Milwaulee, Wi, USA; curved array transabdominal transducer, 2-8MHz)にてFIUV varixの幅と走行および周辺静脈との空間的な関係が明らかとなった.3D inversion modeによりつながる正常な静脈より拡張する臍帯静脈が明らかとなった.
妊娠正期までに何度も再検し,嚢胞状部分が退縮し正常径となったことを確認した.妊娠41週3日に3648gの女児が経腟分娩にて誕生し,臍帯動脈pHは7.229,Apgar scoreは1分後7点,5分後9点であった.臍帯を含めすべてに異常を認めなかった.
3D/4Dカラー/パワードプラ超音波は超音波診断において効果的であり有用であるが,2D超音波では静脈叢からFIUVを区別するのは困難である場合もある.腹腔内領域においてこの血管異常はほかの嚢胞状領域とは,2Dカラー/パワードプラ超音波にて区別可能である.3D/4Dカラー/パワードプラ超音波は静脈系全体を明らかとし,形状と輪郭線を際ださせることが可能であった.
3D inversion modeにより,エコーフリースペースの静脈の解剖学,病理学的構造構築の観察が可能であったが,これは従来の2D超音波では不可能であった.この報告は我々の知り得る限り,3D/4Dカラー/パワードプラ超音波および
3D inversion modeによるFIUV varixの最初の報告である.さらに医師および患者夫婦にとって視覚的にその異常を認識し,胎児奇形に関しての理解と相談,診断の補助となる.しかし3D/4Dの技術はあくまで補助的要素であり,従来の診断,治療,相談を変えるものではない.
もしFIUV varixが単独で認められた場合には,良好な周産期結果が期待できる.しかし,綿密な胎児および発育の観察が必要であり,早期での分娩は勧められていない.
倫理基準;すべての手順は人体実験に対する院内および国際基準の倫理規定に従い,1975年および2008年に改訂されたヘルシンキ宣言に基づいている.本研究につき患者すべてからの同意が得られている.