Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(1)

(S619)

当センターにおける食道閉鎖症の出生前診断についての検討

Ultrasound and MRI prenatal diagnosis of esophageal atresia in a single center

犬塚 悠美, 杉林 里佳, 棚橋 あかり, 関口 将軌, 住江 正大, 梅原 永能, 和田 誠司, 渡辺 典芳, 左合 治彦

Hiromi INUZUKA, Rika SUGIBAYASHI, Akari TANAHASHI, Masaki SEKIGUCHI, Masahiro SUMIE, Nagayoshi UMEHARA, Seiji WADA, Noriyosi WATANABE, Haruhiko SAGO

国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター

Center of Maternal-Fetal, Neonatal and Reproductive Medicine, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
先天性食道閉鎖症の大半は気管食道瘻を伴うことから生後早期より呼吸器症状発症するため,早期治療が必要であり,出生前診断の意義は大きい.しかし,種々の画像診断の精度の向上にも関わらず,食道閉鎖症の確実な出生前診断は容易ではない.今回当センターにおいて先天性食道閉鎖症と診断された症例における出生前画像所見について検討した.
【方法】
対象は2002年10月から2013年10月に当センターで出生後に食道閉鎖症と診断された19例と出生前診断で疑われたが出生後に否定された9例の計28症例を,診療録をもとに後方視的に検討した.出生前診断に至った画像所見,羊水過多の有無とその初回指摘時期,羊水量が最大となった時期,羊水除去の有無と総羊水除去量について検討した.統計学的解析にはt検定とχ2検定を用い,p<0.05を有意差ありとした.
【結果】
食道閉鎖症の19例の全てがGross C型で,出生前に疑われた症例は12例であり,羊水過多,胃胞同定困難,上部食道の拡張(upper neck pouch sign)の診断感度はそれぞれ84%(16/19),47%(9/19),53%(10/19)であった.一方,食道閉鎖症ではなかった9例は,染色体異常6例,声帯閉鎖不全1例,コルネリア・デランゲ症候群1例,異常なし1例であり,その多くが嚥下障害を伴う病態で,upper neck pouch signは9例中では1例に認めるのみであった.(表)
羊水過多を認めた23例の検討では,発現週数の平均は食道閉鎖症群で29.7±2.9週,非食道閉鎖症群で25.5±3.2週で,食道閉鎖群では有意に発現週数が遅かった.また,羊水最大深度(MVP)が最大値となった週数の平均も食道閉鎖症群で34.5±1.9週,非食道閉鎖症群で29.1±4.6週で,食道閉鎖群では有意に遅い時期であった.羊水除去の回数や羊水除去量には両者で有意な差を認めなかった.
【考察】
羊水過多や胃胞同定困難から食道閉鎖症を疑った場合,経腹超音波検査やMRI検査でupper neck pouch signの同定が出生前診断に有用である.さらに,羊水過多の発現週数やMVPが最大値となる週数も食道閉鎖症の出生前診断の一助となり,これらの所見を総合的に判断する事により,出生前診断の精度が向上する事が示唆された.