Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常(1)

(S618)

左肺の無形成を伴っていた先天性左横隔膜ヘルニアの1症例

Left pulmonary agenesis in a fetus with congenital left diaphragmatic hernia: A case report

日高 庸博1, 村上 孟司1, 湯元 康夫1, 藤田 恭之1, 福嶋 恒太郎1, 加藤 聖子1, 永田 公二2, 田口 智章2

Nobuhiro HIDAKA1, Takeshi MURAKAMI1, Yasuo YUMOTO1, Yasuyuki FUJITA1, Kotaro FUKUSHIMA1, Kiyoko KATO1, Koji NAGATA2, Tomoaki TAGUCHI2

1九州大学病院産婦人科, 2九州大学病院小児外科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Kyushu University Hospital, 2Departmenf of Pediatric Surgery, Kyushu University Hospital

キーワード :

【はじめに】
先天性横隔膜ヘルニアの重症度を胎児期に評価するにあたってLTR(肺胸郭断面積比)やLHR(肺断面積児頭周囲長比)などの超音波指標が用いられるが,いずれも健側肺をターゲットにした指標であり,患側肺の大きさは問うていない.今回,胎児期に左横隔膜ヘルニアと診断し,LTRやLHRはさほど低値でなかったにもかかわらず,生後に重篤な経過をたどり,手術時に左肺の無形成が判明,救命できなかった症例を経験したので報告する.
【症例】
33歳の初産婦で,家族歴と既往歴に特記事項はなし.妊娠26週で胎児胸腔内異常像を指摘されて当院紹介,胎児超音波検査で左横隔膜ヘルニアと診断し同時にファロー四徴症の合併を指摘した.主肺動脈は上行大動脈よりは細いものの閉鎖の状態ではなく,順行性の血流を確認した.LTR 0.17,o/e LHR 51%,胃の位置Grade1(Kitano分類)と,重症な肺低形成を示唆する値ではなかった.肝臓の左葉は胸腔内に挙上しており,それ以外には単一臍帯動脈を認めた.妊娠33週で撮影した胎児MRIでも右肺のボリュームは左横隔膜ヘルニアとしては比較的保たれているように観察された.ただ左肺像は明らかでなかった.妊娠36週0日,NRFSの診断で帝王切開を行い児を娩出した.児は出生体重2056gの男児で,Apgar score 1/7点,臍帯動脈血pH 7.402であった.外表の異常として,両耳介欠損と左拇指の欠損を認めた.2生日で手術を行われ,左肺は完全に無形成の状態であった.術後ECMOから離脱できず,全身状態悪化し,15生日で死亡退院となった.
【結語】
本児の予後が不良であった原因として心疾患の合併は重要な因子であったが,術後に膨らむべき肺が完全に欠損していたことの影響も小さくないと考えられた.横隔膜ヘルニアと診断した胎児の画像評価においては,健側肺のみならず患側肺のサイズにも注目することの意義を再認識した.