Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
その他1

(S605)

十二指腸瘻孔を形成した腹部結核性リンパ節炎の1例

A case of Abdominal Tuberculous Lymphadenitis with the formation of a Duodenal Fistula

加藤 真里1, 内田 政史2, 内田 信治3, 中山 剛一3, 緒方 裕3, 坂田 雅浩4, 水島 靖子1, 橋本 好司5, 中島 収5, 山口 倫1

Mari KATOU1, Masashi UCHIDA2, Shinji UCHIDA3, Gouichi NAKAYAMA3, Yutaka OGATA3, Masahiro SAKATA4, Yasuko MIZUSHIMA1, Kouji HASHIMOTO5, Osamu NAKASHIMA5, Rin YAMAGUCHI1

1久留米大学医学部附属医療センター臨床検査室, 2久留米大学医学部附属医療センター放射線科, 3久留米大学医学部附属医療センター外科, 4久留米大学医学部附属医療センター消化器内科, 5久留米大学病院臨床検査部

1Department of Clinical Laboratory, Kurume University Medical Center, 2Department of Radiology, Kurume University Medical Center, 3Department of Surgery, Kurume University Medical Center, 4Department of Gastroenterology, Kurume University Medical Center, 5Department of Clinical Laboratory, Kurume University Hospital

キーワード :

我々は,十二指腸と瘻孔を形成した腹部結核性リンパ節炎の1例を経験したので報告する.
【症例】
患者:50才代,女性.主訴:食欲不振,体重減少,腹痛.血液生化学検査:CRP 2.92mg/dlと軽度の炎症反応およびCA19-9 60.7 U/mLの上昇あり.腹部超音波検査:肝門部に内部不均一で集簇する8×3cmの低エコー腫瘤を認めた.膵臓,胃壁と腫瘤の境界は保たれており,胆管,膵管拡張や血管浸潤所見は認めなかった.造影CT検査:嚢胞性部分と壁から内部に一部造影効果を伴う充実性部分から成る最大8cmの不整な多房性腫瘤を指摘.PET検査:FDG-SUVmax5.71→10.34の異常集積あり.上部内視鏡検査:十二指腸球部に,白苔および浸出液の流出と,その奥に管腔様構造を認め,腫瘤との瘻孔形成が疑われた.
【経過】
内視鏡生検と超音波ガイド下生検の結果,炎症細胞浸潤や巨細胞を含む炎症性肉芽組織は検出されたが,確定診断できず経過観察されていた.1か月半後の超音波および造影CT検査で,腫瘤径が3.6cmと明らかに縮小し,周囲にリンパ節を認めた.この時点で施行した造影超音波検査では,動脈優位相で腫瘤辺縁から中央に向かってソナゾイドが豊富に流入し,後血管相では染影の低下を認めた.腫瘍は縮小傾向にあったが,PET検査では異常集積を認め,悪性腫瘍の可能性も否定できず試験開腹を施行した.術中迅速病理組織で,乾酪壊死とラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を認め,悪性疾患は否定的で,結核が疑われたため閉腹した.摘出リンパ節の培養検査でMycobacterium tuberculosis complexが検出され,腹部結核性リンパ節炎と診断された.現在,抗結核剤で加療中である.
【考察】
一般的に,腹部結核性リンパ節炎に特徴的な画像所見は乏しいとされており,呼吸器症状を伴わない場合,画像診断のみでの診断は困難なことが多い.本症例では,炎症を反映して造影超音波で豊富な動脈血流を認めた.また,短期間の経過の中で腫瘤径縮小や内部性状の変化がみられた点が特異的で,一つの有用な所見であったと思われる.その原因としては,腫大したリンパ節の液状内容物が,瘻孔を形成した十二指腸側へ流出したことが考えられる.超音波,CT,MRI所見が経時的な変化を呈した場合,様々な可能性を考え検査所見の推移を注意深く観察すべきである.