Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
その他1

(S605)

腹膜垂炎の超音波像の検討

Study of ultrasonographic findings in epiploic appendagitis

中村 元哉1, 佐藤 慎祐1, 氏次 初枝2, 杉山 髙1

Motoki NAKAMURA1, Shinsuke SATOH1, Hatsue UJITSUGU2, Koh SUGIYAMA1

1浜松南病院放射線科, 2浜松南病院臨床検査科

1Department of Radiology, Hamamatsu South Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Hamamatsu South Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹膜垂炎は予後が良好で投薬治療での治癒が可能な疾患である.しかしながら比較的稀な疾患ということ,症状が虫垂炎や憩室炎に酷似していることなどの理由から診断が容易でない場合が多く,手術により診断されることも少なくない.近年では主にCTでの診断が確立している.超音波検査による診断の報告例は少ないが,Riouxらは「結腸壁に隣接する辺縁低エコー帯を伴った卵円形の高エコー腫瘤像を呈する」と報告しており,その後の報告例でも同様の所見が特徴的所見として提示されている.このことから,超音波検査のみで腹膜垂炎は診断できるのではないかと考え検討した.
【方法】
2008年から2013年の6年間に経験した5例の腹膜垂炎について,Riouxらの報告にある「結腸壁に隣接する辺縁低エコー帯を伴った卵円形の高エコー腫瘤像」を超音波所見の典型像とし,典型像を呈した例,非典型像を呈した例についてCTとの比較および文献的考察を加え検討した.
【結果】
年齢は33〜59歳(平均45.8歳),性別は全症例男性であった.部位は横行結腸が1例,下行結腸が3例,S状結腸が1例であった.超音波検査では5例のうち3例で過去の文献で報告されている像と同様の像を呈し(図),また,CTの所見とよく相関した.非典型像を呈した2例のうち1例は楕円形の低エコー腫瘤像を呈し,1例は経過観察により炎症性変化を伴った脂肪塊が横行結腸周囲から膵頭部の腹側へ移動を認め,大腸から腹膜垂が脱落したと考えられた症例であった.検討した5例は全て手術には至らず投薬治療のみで軽快した.
【考察】
超音波検査にて典型像を呈した例はCTの所見ともよく相関し,超音波検査の所見でも診断可能と思われた.非典型例を呈した2例のうち低エコー腫瘤像を呈した症例は,CTでは典型像を呈していた.吉見らの報告で同様の像を呈した症例があり,血管の梗塞や出血,脂肪壊死,膿瘍形成,リンパ球浸潤等が要因として挙げられている.腹膜垂が脱落した症例では経過観察による所見の変化が診断するうえで重要な要素であると考えられた.
【結語】
超音波検査の所見で腹膜垂炎の診断は可能である.非典型像を呈する例は経過観察や他の画像診断も含め慎重に診断する必要がある.