Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
Elastography4

(S600)

B型慢性肝疾患に対するエンテカビル治療経過におけるVTQの有用性の検討

Usefulnes of Virtual Touch Tissue Quantification in the follow up of chronic hepatitis B treated with entecavir

高畠 弘行1, 萱原 隆之1, 守本 洋一1, 友國 淳子2, 山本 博1

Hiroyuki TAKABATAKE1, Takayuki KAYAHARA1, Youichi MORIMOTO1, Junko TOMOKUNI2, Hiroshi YAMAMOTO1

1倉敷中央病院消化器内科, 2倉敷中央病院臨床検査科

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kurashiki Central Hospital, 2Laboratory Medicine, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

目的近年,超音波診断装置を用いた非侵襲的な肝線維化評価について検討が進められ,C型慢性肝炎などを中心にその有用性が認められている.我々はこれまでVirtual Touch Tissue Quantification(VTQ)の肝線維化評価などにおける有用性を報告してきた.B型慢性肝疾患診療における核酸アナログ製剤の有用性は明らかであるが,今回我々はエンテカビル(ETV)投与中のVTQの推移を検討し,VTQのB型慢性肝疾患における病状評価の有用性について検討した.
方法当院でB型慢性肝疾患に対し経過観察中,VTQによるせん断波速度(Vs値)を測定した256例(男性156例・女性100例)のうちETVが投与されていた98例(男性68例・女性30例),58.3±11.1歳について,その臨床経過ならびにVs値の推移について検討を行った.使用機種はシーメンス社製ACUSON S2000を用い,肝右葉ならびに脾に測定域(ROI)を設定し,それぞれ10回測定,その平均と標準偏差を求めた.
【成績】
Vs値の初回測定時には肝右葉で1.846±0.802m/s,脾で2.989±0.462であった.肝組織と比較しえた33例では,F因子とVs値(r=0.2232)活動性とVs値(r=0.2995)ともに有意な相関は確認できなかった.初回観察時の臨床成績はAlb4.09±0.56g/dl,T.Bil0.78±0.37mg/dl,AST40.4±36.2,ALT37.8±39.7,γ-GTP58.3±102.6(IU/L)であった.14.4±7.1か月後の経過観察時には肝のVs値は1.918±0.863,脾のVs値は3.035±0.516でそれぞれ前値との間に有意差を認めなかった.一方Alb4.07±0.66g/dl,T.Bil0.83±0.37mg/dl,AST29.0±12.6,ALT24.2±10.7,γ-GTP47.1±44.2(IU/L)とAST,ALT,γ-GTPに有意な改善を認めた.ETV投与開始時にVs値を測定した27例の内,経過の追えた10例に限った検討では,平均10.7±6.2ヶ月の経過において,肝のVs値は2.125±0.768から1.704±0.585へ有意な低下を認め,脾のVs値は2.910±0.681から3.104±0.598と変化を認めなかった.AST71.5±53.0が32.1±15.3へ,ALT60.4±38.0が23.1±12.9へ,γ-GTP113.3±96.7が54.5±56.5へと有意な低下を認めた.
考案VTQを用いたETV投与中のB型慢性肝疾患の経過観察を試みた.Vs値と線維化(F因子)活動性(A因子)に有意な相関は観察されなかった.短期間の観察であったためか,ETV投与中にVs値に有意な改善は得られなかったが,治療初期の症例に限った検討ではVs値に改善が見られた.B型慢性肝疾患ではC型慢性肝疾患で指摘されているようにVs値が線維化を十分には表現できていない可能性が示唆された.Vs値は肝の硬度の他に粘度の影響を受けることが指摘されており,肝の線維化の他に,炎症・うっ血・胆汁うっ滞などの影響を受けることが示唆されている.今回の検討は短期間の観察であったため,線維化よりも炎症がVs値に影響を与えていた可能性が考えられた.肝生検の多くは,治療介入時もしくはその適応検討のために行われており,比較するVs値は線維化以外の要因が影響を与える可能性がある.B型慢性肝疾患における線維化とVs値の評価は炎症が落ち着いている病態での評価検討が望ましいものと考えられるが,臨床的にはそのような状況での組織検査は行われにくいのが現状である.このため,B型慢性肝疾患におけるVs値を用いた評価においては,さらにより長期の経過において検討されることが望ましいと考えられた.
結語
B型慢性肝疾患においてのVs値の測定は線維化の他に炎症の影響を強く受けている可能性が示唆された.ETV投与においてはその投与初期にVs値の改善が観察されるが,より長期の観察を行い,その有用性を検討する必要があるものと考えられた.