Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓5

(S598)

肥満と糖尿病が肝脂肪化と線維化に及す影響と病態関連因子の解析

Study on the influence of obesity and diabetes on hepatic steatosis and fibrosis and the analysis of pathophysiology-related factors

志田 隆史1, 小野塚 太郎1, 呉 世昶2, 上牧 隆5, 磯辺 智範1, 岡本 嘉一3, 矢藤 繁4, 島野 仁4, 正田 純一1

Takashi SHIDA1, Taro ONOZUKA1, Sechang OH2, Takashi KAMIMAKI5, Tomonori ISOBE1, Yoshikazu OKAMOTO3, Shigeru YATO4, Hitoshi SHIMANO4, Junichi SHODA1

1筑波大学医学医療系医療科学, 2筑波大学体育系スポーツ医学, 3筑波大学医学医療系放射線診断科, 4筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科, 5筑波大学附属病院検査部

1Medical Science, University of Tsukuba, 2Sports Medicine, University of Tsukuba, 3Division of Diagnostic Radiology, University of Tsukuba, 4Endocrinology and Metabolism, University of Tsukuba, 5Department of Clinical Laboratory, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

【背景】
肥満と糖尿病(DM)は増加の一途に有り,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者数も急増している.NAFLDの一部は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)へ移行し,肝硬変や肝癌の発症に至ることより,日常臨床における肝病態の評価は重要である.肝病態の正確な把握には肝生検が必要であるが,侵襲的な検査であること,反復して施行することが困難であることより,多数の患者を対象とすることには適さない.近年登場したフィブロスキャンは超音波振動の伝達速度から肝弾性度と脂肪化度を非侵襲的に測定する機器である.そこで今回は,当院で経験したNAFLD症例について,フィブロスキャン(Fibroscan 502)を用いた肝脂肪化度および弾性度の測定を行い,さらに臨床検査値,NAFLDの病態関連因子の解析を行い,肥満度とDMが肝病態に及ぼす影響について比較検討を行った.
【方法】
平成23年4月から平成25年10月の期間に当院肝臓生活習慣病外来を受診したNAFLD 271例(男女比178:93)を対象とした.BMI>30の中高度肥満とDMの合併の観点より,全症例をA群(BMI<30,DM-),127例,53±11歳;B群(BMI<30,DM+),58例,58±12歳;C群(30<BMI, DM-),57例,46±13歳;D群(30<BMI, DM+),29例,48±11歳の4群に分類した.各測定項目の結果をmean±SDで示す.
【結果】
肝脂肪化度(CAP)dB/m(A 268±36,B 273±37,C 309±36,D 314±37; C, D>A, B), 肝弾性度(E)kPa(A 6.0±3.2,B 7.8±4.4,C 8.7±4.8,D 11.5±6.6; C, D>B>A), 内臓脂肪面積cm2(A 137±44,B 129±30,C 178±58,D 205±51; D>C>A, B), ALT U/L(A 31±19,B 52±43,C 56±41,D 61±42; B, C, D>A), 空腹時血糖mg/dL(A 98±11,B 156±41,C 100±11,D 158±38; D>A, C; B>A), 空腹時インスリン濃度μIU/L(A 8.2±5.8,B 15.0±24.4,C 15.0±9.4,D 19.1±18.8; B, C, D>A), HOMA-IR(A 2.0±1.6,B 5.4±7.4,C 3.8±2.6,D 8.2±10.9; D>C>A; B>A), hs-CRP mg/dL(A 0.06±0.07,B 0.07±0.10,C 0.12±0.10,D 0.17±0.12; D>C>A, B), TBARSμmoles/L(A 9.6±6.2,B 15.0±6.8,C 10.7±5.8,D 17.6±7.2; D>C>B>A), IL-6 pg/mL(A 1.9±1.3,B 2.3±1.5,C 2.4±1.3,D 2.7±1.5; C, D>A; B>A), leptin ng/mL(A 8.9±7.9,B 11.6±14.9,C 17.2±12.1,D 18.6±12.5; C, D>A, B), adiponectinμg/mL(A 4.8±2.6,B 5.0±3.7,C 4.6±2.5,D 3.8±2.9; A, B>D), M30 U/L(A 215±115,B 247±169,C 341±347,D 446±382; C, D>A, B)であった.多変量解析の結果,CAP値に影響する因子として,性別,BMI,γGT,ferritin,hs-CRPが抽出され,また,高度脂肪化(S3)のカットオフ値292.3 dB/mを超える症例では,BMI(OR1.24),ΑLΤ(1.01)が関連因子として抽出された.一方,E値に影響する因子として,BMI,血小板,HOMA-IR,ALT,HA,hs-CRP,M30が抽出され,また,高度線維化(F4)のカットオフ値12.5 kPaを超える症例では,年齢(OR1.06),BMI(1.24),HOMA-IR(1.51),γGT(1.01),M30(1.00)が有意な関連因子として抽出された.
【結語】
NAFLDにおける中高度肥満,DM,両者の合併は,異所性脂肪蓄積の増加,インスリン抵抗性の増悪,炎症と酸化ストレス状態の増悪と関連して,NAFLDの肝脂肪化と線維化の進展に重要な役割を果たすと考えられた.