飯島 尋子^{1, 2}, 山平 正浩¹, 西村 純子¹, 吉田 昌弘¹, 東浦 晶子¹, 橋本 眞里子¹, 柴田 陽子¹, 橋本 健二^{1, 2}, 田中 弘教^{1, 2}, 赤尾 憲二³

Hiroko IIJIMA^{1, 2}, Masahiro YAMAHIRA¹, Junko NISHIMURA¹, Masahiro YOSHIDA¹, Akiko HIGASHIURA¹, Mariko HASHIMOTO¹, Youko SHIBATA¹, Kenji HASHIMOTO^{1, 2}, Hironori TANAKA^{1, 2}, Kenji AKAO³

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学内科肝胆膵科, ³東芝メディカルシステムズ株式会社大阪サービスセンタ

¹Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, ²Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease,Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, ³Osaka service center, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【目的】
日常臨床での肝腫瘍の診断や鑑別において血流の多寡の評価は必須である．東芝メディカルシステムズ社からカラードプラを改善させた新しい血流表示法（SMI：Superb Micro vascular Imaging）が開発された．SMIは，Advanced Dynamic Flow（ADF）よりもフレームレートが向上し，モーションアーティファクトを抑制する機能が向上している．SMIにはADFと同様にBモードに血流を重ねて表示するcSMI（color coded SMI）と血流信号のみを白黒表示するmSMI（monochrome SMI）がある．これらを使用する機会を得たので，従来のカラードプラ法またはADFと比較検討した．
【対象】
2013年4月から11月まで腹部超音波検査，ADF，SMIを施行した患者で内訳は肝細胞癌9例（男性7例，女性2例，平均年齢75.6歳，平均腫瘍径28.3mm），限局性結節性過形成（focal nodular hyperplasia: FNH）6例（男性2例，女性4例，平均年齢54.3歳，平均腫瘍径22.0mm）である．
【方法】
使用装置は東芝メディカルシステムズ社製　Aplio500プロトタイプである．使用プローブは腹部用コンベックスプローブ（PVT-375BT）及び高周波リニアプローブ（PLT-704SBT）を使用した．腹部超音波検査，カラードプラまたはADF，SMI（cSMI，mSMI）の血流検出感度を比較した．目視によって腫瘍血管の特徴的な形態（肝細胞癌ではバスケットパターン，FNHでは車軸様パターン）の有無を強く認識できるもの，弱く認識できるもの，全く認識できないものの3段階に分類した．
【結果】
肝細胞癌症例は，カラードプラまたはADFにてバスケットパターンを認識できないあるいはできても弱かった症例が9例中3例であり，cSMIで強く認識できたものは9例中8例，mSMIでは9例中7例で強く認識できた．FNH症例は，カラードプラまたはADFにて車軸様パターンを6例全例で弱く認識できるが，cSMIでは全例で強く認識でき，mSMIでは6例中3例で強く認識できた．速度レンジはADFでは6.7〜15.7cm/s，SMIでは1.2〜3.9cm/sで観察した．フレームレートはカラードプラおよびADFでは7〜19fps，SMIでは48〜58fpsであった．
【考察】
今回の症例では，肝細胞癌およびFNHともにカラードプラおよびADFでは認識できない或いはできても弱い血管構築が，SMIでは詳細かつ鮮明に認識できた．理由としては，SMIの速度レンジがADFよりも低いことでより低流速の血流まで観察できている点が考えられる．そのために，低流速で微細な血管構築をより分かり易く認識できる利点がある．また，フレームレートが高いので，プローブを動かした時の追従性が良く，血流の動的な変化が観察できる利点がある，