古泉 友丈, 村上 雅彦, 青木 武士, 藤森 聡, 三田村 圭太郎, 草野 智一, 松田 和広, 渡辺 誠, 大塚 耕司, 加藤 貴史

Tomotake KOIZUMI, Masahiko MURAKAMI, Takeshi AOKI, Akira FUJIMORI, Keitaro MITAMURA, Tomokazu KUSANO, Kazuhiro MATSUDA, Makoto WATANABE, Koji OTSUKA, Takashi KATO

昭和大学消化器・一般外科

Department of Gastroenterological and General Surgery, Showa University

キーワード :

【背景】
超音波診断装置の開発は，多種多様な応用技術が搭載され多角的な超音波画像診断能の向上に重点が置かれたハイエンド装置と，基本性能のみを残し小型化・簡略化を目的とした携帯型超音波装置の二極にわかれて進歩を続けている．教室では手術室・集中治療室にハイエンド装置を，一般病棟である消化器病センターに携帯型超音波装置と従来の超音波装置を配置している．携帯型超音波装置はこれまで循環器領域を始めとして，救急・腹部・婦人科領域または在宅医療・災害時のトリアージにおいてその有用性が報告されてきている．今回我々は消化器外科手術周術期管理における携帯型超音波装置の有用性を検討しその結果を報告する．
【方法】
教室では手術室・集中治療室にハイエンド装置であるLOGIQ E9（GE Healthcare）を，一般病棟である消化器病センターに携帯型超音波装置であるV Scan（GE Healthcare）を配置している．手術室ではLOGIQ E9のVolume Navigation機能を用いた手術支援を，集中治療室では各病室の十分に確保されたスペースでLOGIQ E9を用いた術後胸・腹腔内の詳細な評価を行う．それに比し，急性期を離脱し一般病棟に帰棟した術後患者評価にV Scanを使用した．対象は2013年1月〜12月に手術を施行した肝胆膵・下部消化管手術症例310例のうちV scanにて評価した105例．術中術後に中心静脈カテーテル管理を要する患者に対し，術前日Vscanのガイド下にカテーテルを挿入した．また毎日の一般病棟回診時にV Scanを携帯し，バイタルサイン・理学的所見の変化を認めた術後症例に対しV Scanで胸・腹腔内評価を行い，限られたベッドサイドのスペースにおいて，同定された理学的所見を超音波画像評価とリアルタイムで照らし合わせた．評価項目として胸水・無気肺，腹腔内膿瘍・腹腔内貯留液，術後出血，水腎症・膀胱内尿貯留，腸管拡張・腸管蠕動低下，胆嚢炎等の有無を観察し，肝胆膵外科領域では肝・膵離断面の貯留液，胆管拡張，吻合再建部位周囲の貯留液の有無，数値化はできないものの肝内脈管血流評価を行った．
【結果】
胸水・無気肺を12例，腹腔内膿瘍を2例，肝離断面貯留液を3例，術後腸管機能低下に伴う腸管拡張を6例認め，熱源検索として同時に施行したCT所見と同一の画像所見が観察された．またVscanガイド下に穿刺部位を同定し，中心静脈カテーテルおよび胸腔・腹腔内貯留液／膿瘍に対するドレナージカテーテルを安全に挿入することが可能であった．
【結語】
バイタルサイン・血液検査所見・理学的所見およびV Scanにて描出された胸・腹腔内所見を日々の病棟回診において同時に確認し総合的に評価することで，合併症出現の際の早期診断・早期治療開始が可能となった．携帯型超音波装置はその簡便さ故，消化器外科手術後症例の状態変化を経時的に追跡することを容易とし，診断・治療を含めた適切な術後管理を行う際の有用なツールと考えられる．