Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
造影超音波検査2

(S573)

Sonazoid造影超音波で血流評価できた原発性肝扁平上皮癌の1例

A case of primary squamous cell carcinoma of the liver

山本 奈菜子1, 會澤 信弘2, 山平 正浩3, 柴田 陽子3, 中野 智景2, 3, 橋本 健二2, 3, 田中 弘教2, 3, 飯島 尋子2, 3, 西口 修平2

Nanako YAMAMOTO1, Nobuhiro AIZAWA2, Masahiro YAMAHIRA3, Youko SHIBATA3, Chikage NAKANO2, 3, Kenji HASHIMOTO2, 3, Hironori TANAKA2, 3, Hiroko IIJIMA2, 3, Shuhei NISHIGUCHI2

1兵庫医科大学卒後臨床研修センター, 2兵庫医科大学肝胆膵内科, 3兵庫医科大学超音波センター

1Post-Graduate Training Center, Hyogo college of medicine, 2Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, 3Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【はじめに】
肝原発悪性腫瘍は肝細胞癌,胆管細胞癌が95%を占める.原発性肝扁平上皮癌は極めて稀で,本邦での報告はわずかに8例のみで,世界的にも20数例しか報告されていない.今回,肝原発扁平上皮癌と診断した1例を経験したので報告する.
【症例】
63歳・男性
数ヶ月前から心窩部通を認めるため近医受診し,腹部超音波検査,腹部CTにて肝腫瘍を指摘された.肝腫瘍生検を施行し,扁平上皮癌の病理組織であった.2013年6月に精査加療目的で当院紹介受診となった.腹部造影CTでは肝左葉に6cm大の不均一に造影される腫瘍を認め,腫瘍中心部に嚢胞状の部分を伴っていた.膵頭部,肝門部への進展を認めた..S7にも同様の腫瘍を認めた.腹部超音波検査のBモードでは,境界不明瞭で全体的にはやや高エコーの5cmの腫瘤性病変を認め,腫瘤の中心部は無エコーを呈していた.Sonazoid造影の動脈相では腫瘤は無エコー域を除いて部分的に染影され,門脈相では染影が低下し,Kupffer相ではdefectを呈した.FDG-PET検査では肝腫瘍,肝門部周囲リンパ節,肝表,腹壁にFDG集積を認めた.上部内視鏡検査にて腫瘍性病変は認めず,口腔領域,耳鼻科領域にも明らかな異常は認めなかった.血液検査ではAFP 2.2ng/ml,CEA 4.9ng/ml,CA19-9 73.8U/ml,SCC抗原9.8 ng/mlと軽度CA19-9,SCC上昇を認めた.
当院で再度肝腫瘍生検を施行したが,限局的に粘液産生像を認めるものの,大部分は低分化扁平上皮癌像を呈していた.
肝腫瘍が主要な病変であり,他に原発巣になりうる病変を認めないため,原発性肝扁平上皮癌と診断した.化学療法を開始したが,奏功せず診断から約4ヶ月後に亡くなられた.
【考察】
肝原発の扁平上皮癌は非常に稀な疾患であり,報告例での画像所見では乏血性で腫瘍辺縁部が不整に造影されることが多い.また,嚢胞状の部分を伴っている報告も認める.今回の症例でも腫瘍全体としては乏血性で,辺縁部のみ造影されていた.また,主病巣のみならず,肝内転移巣にも嚢胞状の部分を認めており,過去の報告と類似していた.
治療法は第一選択として外科的切除が望ましいとされているが,診断時には腫瘍が進展しることが多く,切除例は希である.化学療法が奏功する症例も認めるが,効果は一時的である.予後は非常に悪いとされており,診断から1年以内にほとんどの報告例が死亡している.
【まとめ】
今回,肝原発扁平上皮癌の一例を経験した.非常に希な疾患であり,発生機序,診断,治療を考える上で貴重な症例と考えられるため報告した.