Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
Elastography2

(S570)

Shear wave伝搬速度を利用した2種の肝Elastographyの精度に影響を与える因子

Factors influencing reliability of liver stiffness using two Shear wave elastography

是永 圭子1, 澤部 祥子2, 只野 薫2, 伊藤 里美2, 酒井 あずさ2, 是永 匡紹3, 今村 雅俊1, 溝上 雅史3

Keiko KORENAGA1, Syouko SAWABE2, Kaoru TADANO2, Satomi ITOH2, Azusa SAKAI2, Masaaki KORENAGA3, Masatoshi IMAMURA1, Masashi MIZOKAMI3

1国立国際医療研究センター国府台病院消化器・肝臓内科, 2国立国際医療研究センター国府台病院中央検査部, 3国立国際医療研究センター国府台病院肝炎免疫センター

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kohonodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine, 2Department of Clinical Laboratory, Kohonodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine, 3The Research Center for Hepatitis and Immunology, Kohonodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine

キーワード :

【目的】
当施設では2010年4月よりVirtual Touch Quantification(VTQ)を用いた肝線維化診断を開始し,2013年2月よりFibroScanも併用して肝硬度を測定している.今回は2種のShear wave elastographyの信頼度に影響を与える因子を検討した.
【方法】
対象は2013年2月から9月末までVTQとFibroScanの同時測定を試みた1247症例.対象の平均年齢は64±20歳,男性626例/女性621例,平均BMIは23.8±4.4(BMI<25は全体の65.9%,25-29.9は全体の25.8%,30は全体の8.3%).検査の内訳は慢性肝疾患876例(HCV401例,HBV143例,非B非C24例,アルコール114例,NASH/NAFLD118例,自己免疫性肝疾患76例),糖尿病・脂質代謝異常の肝疾患のスクリーニング目的97例,検査時まで原因未確定の肝機能異常者が173例,その他101例だった.VTQには超音波機種ACUSON S2000(Siemence)と4C1コンベックスプローブを用いた.ROIの深度は肝表面からROI1個分(約1cm)下を目安に設置した.FibroScanにはMプローブを用いた.「測定非信頼群」の定義は,いずれのmodalityも少なくとも10回の測定が不可能,測定成功率が60%未満,interquartile range interval /median value(IQR/Med)が30%以上のいずれかの条件に合致するものとした.
【成績】
1247症例のうちVTQでの非信頼群は227例(18.2%)で,そのうち測定成功率が60%未満に至らず測定不能と判断したのは11例(0.89%)だった.FibroScanの非信頼群は271例(21.7%)で,そのうち88例(7.1%)が測定不能であった.VTQの非信頼群の占める割合はFibroScanのそれより有意に低かった(P<0.05).VTQにおける非信頼群の症例の特徴としては,BMI・体重・体表から肝表までの距離・ROIの深度の値が信頼群よりも有意に高く(BMI;非信頼群26.7±5.5 /信頼群23.2±4.0,肝表までの距離;非信頼群2.1±0.6cm/信頼群1.6±0.4cm, ROI深度;非信頼群4.1±0.5cm/信頼群3.7±0.4cm,いずれもP<0.0001),脂肪肝・糖尿病の併存する割合が有意に高かった(脂肪肝併存率;非信頼群40.1%/信頼群28.6%,P<0.005),糖尿病併存率;非信頼群22.9%/信頼群13.5%,P<0.001).FiboScanに関しても,非信頼群は信頼群に比較してBMI・体重・体表から肝表までの距離は有意に高値だった(BMI;非信頼群24.9±5.4 /信頼群23.4±4.0,肝表までの距離;非信頼群1.9±1.5cm/信頼群1.6±0.4cm, P<0.0001).VTQでは差異のなかった年齢・性別に関して,FibroScanでは有意差を認めた(年齢;非信頼群63.2±14.5歳/信頼群61.0±14.2歳,P<0.05)(性別;非信頼群 男・女=1:1.29/信頼群1: 0.92,P<0.05).脂肪肝や糖尿病の併存率,身長には2群間で有意差はなかった.両エラストグラフィーいずれも非信頼群であった症例は74例・全体の5.9%でBMIの平均値は28.6±5.5だった.VTQでは非信頼群であるもFibroScanでは信頼群であった症例は151例(12.1%),FibroScanでは非信頼群であるもVTQでは信頼群であったのは195例(15.6%)だった.
【結論】
VTQはFibroScanで測定不能であった肥満例や有腹水症例でも測定可能であり,測定可能率・測定信頼率のいずれも有意に高かった.その一方で,脂肪肝や糖尿病の併存が測定の信頼性に影響する可能性がある.FibroScanの測定対象はVTQに比べ制限があり,信頼度も年齢・性別という症例の不可逆的要素の影響も受けるが,測定できた場合VTQより肝脂肪沈着の影響を受け難い.Shear wave伝搬速度を利用するという原理の同じエラストグラフィーであっても測定に影響する因子は共通の肥満以外に異なるものがあり,併用する意義がある.