Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓3

(S561)

超音波にて肝血管腫の周囲に見られる低エコー域についての検討

The clinical US study of hypoechoic area surrounding hemangioma in fatty liver

成田 祐美1, 杤尾 人司1, 杉之下 与志樹2, 鄭 浩柄2, 今井 幸弘3, 田村 明代1, 岩崎 信広1, 濱田 一美1, 簑輪 和士1, 猪熊 哲朗2

Yumi NARITA1, Hitoshi TOCHIO1, Yoshiki SUGINOSHITA2, Hiroshi TEI2, Yukihiro IMAI3, Akiyo TAMURA1, Nobuhiro IWASAKI1, Kazumi HAMADA1, Kazushi MINOWA1, Tetsurou INOKUMA2

1神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部, 2神戸市立医療センター中央市民病院消化器内科, 3神戸市立医療センター中央市民病院消化器内科臨床病理科

1Clinical Laboratory, Kobe City Medical Center General Hospital, 2Gastrointestinal Medicine, Kobe City Medical Center General Hospital, 3Clinical Pathology, Kobe City Medical Center General Hospital

キーワード :

【緒言】
肝腫瘍の辺縁に描出される低エコー帯は,一般的には悪性腫瘍において観察されることが多く,例えば肝細胞癌においては線維性被膜の形成,また転移性肝癌においてはviable cellの集合域等を反映したものと考えられている.しかしながら,良性腫瘍である肝血管腫においても腫瘍周囲に実質輝度より低エコーに描出される部分が認められ,時に悪性腫瘍との鑑別が紛らわしい場合がある.今回我々は,血管腫周囲に描出される低エコー域について検討しその原因を考察した.
【対象と方法】
臨床的に診断された血管腫症例を対象として以下5項目の検討を行なった.①2011年7月〜2013年6月の間にUSを実施した564例の動画像をレビューし,腫瘍周囲に低エコー域が観察される頻度について,脂肪肝の有無により分類した2群間での比較検討.②前向き検討として,2013年7月〜2013年10月の間にUSを施行した77例を対象に,前述同様の2群間の比較検討.③前述全症例を対象として腫瘍周囲に認められた低エコー域の形状について検討.④他の画像情報として,腫瘍周囲に低エコー域が認められた症例の内,US実施から前後1年以内にCTもしくはMRIを施行した31例を対象に腫瘍周囲の実質像について観察.⑤以前に経験した脂肪肝を合併する血管腫の1切除例についての病理組織学的検討.
【結果】
①血管腫周囲の低エコー域は後ろ向き検討では,脂肪肝群24.6%(32例/130例),非脂肪肝群2.8%(12例/434例)に認められ,その比率は前者で有意に高かった(p<0.01).②前向き検討では,脂肪肝群で43.8%(7例/16例),非脂肪肝群では1.6%(1例/61例)と,前者の頻度は更に高くなった.③低エコー域の形状については,腫瘍周囲に帯のように認められる帯状型,腫瘍周囲に広く不整形に認められる非帯状型の2つに大別され,帯状型26例(60.0%),非帯状型18例(40.0%)であった.④腫瘍周囲に低エコー域が認められた44症例の内,CT・MRIを施行していた31例中11例(35.4%)に腫瘍周囲に低脂肪化域と考えられる像(CTでは他の実質と比較して高吸収な領域,MRIではT1 out of phaseで非高信号化域)が確認された.⑤脂肪肝が背景にある血管腫の1切除例の周囲には,比較的明瞭な境界を呈する脂肪沈着の少ない領域が組織学的に確認された.
【考察】
今回の検討で,肝血管腫の周囲に低エコー域が認められる症例は確かに存在し,しかも決して希なことではなく,特に脂肪肝を背景とする場合には詳細な観察により約4割の症例に認められることが判明した.これは,血管腫例を対象とした前向き検討で脂肪肝群においてその頻度が向上したことにより言えることである.低エコー域の原因としては,CTやMRIで腫瘍周囲に低脂肪化を示唆する領域が約4割の症例において確認されたこと,USによる低エコー域の存在頻度が非脂肪肝に比べ脂肪肝群において有意に高いこと等から,脂肪肝を背景にしたspared area,すなわち低脂肪化域の反映と考えられる.これを裏付けるが如く脂肪肝を背景とする血管腫の1切除例において腫瘍周囲に低脂肪化域が組織学的に確認された.
低エコー域の形状はspared areaと考えられやすい非帯状を呈する場合の一方で,HCCや転移性肝癌に類似した帯状のものが約6割を占めた.血管腫周囲の低エコー域はおそらく胆嚢床や門脈水平部の低脂肪化域と類似した肝内血行異常の存在が推察されるが,帯状と非帯状の違いを含め今後更に検討して行かなければならない課題と考えている.
【結論】
血管腫周囲の低エコー域は低脂肪化域の反映と考えられた.