Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓3

(S560)

長期経過観察による肝血管腫の腫瘍径の変化(10年以上経過観察した80病変での検討)

The Change in size of Hepatic Hemangioma during Prolonged Observation(80 lesions with prolonged observation of more than 10 years)

小川 恭子1, 荒瀬 康司1, 奥田 近夫1, 田村 哲男2, 小泉 優子2, 小山 里香子2, 今村 綱男2, 井上 淑子3, 桑山 美知子3, 竹内 和男2

Kyoko OGAWA1, Yasuji ARASE1, Chikao OKUDA1, Testuo TAMURA2, Yuko KOIZUMI2, Rikako KOYAMA2, Tunao IMAMURA2, Yoshiko INOUE3, Michiko KUWAYAMA3, Kazuo TAKEUCHI2

1虎の門病院健康管理センター, 2虎の門病院消化器内科, 3虎の門病院臨床生理検査部

1Health Management Center, Toranomon Hospital, 2Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital, 3Department of Clinical physiology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
肝血管腫は腹部超音波検査で2〜5%の頻度で発見される比較的頻度の高い病変である.病理学的には非上皮性良性腫瘍で,そのほとんどが海綿状血管腫である.大部分は無症状でサイズは変化しないと報告されているが,まれに巨大例,増大例,破裂例,縮小例を経験する.しかし,これまでの報告の多くは数年以内の経過観察例であり,多数例での長期経過観察による検討は少ない.そこで,当院の人間ドックの腹部超音波検査で肝血管腫と診断され,10年以上の長期に経過観察されている肝血管腫について,その腫瘍径の変化を検討した.
【対象と方法】
2011年の1年間に虎の門病院付属健康管理センターの人間ドックにおいて腹部超音波検査を行った16,244例のうち,肝血管腫またはその疑いと診断された1,600例(9.8%)を調査し,10年以上の経過観察がある76例,80病変を対象とした.超音波での肝血管腫の診断は,主として日本超音波医学会認定超音波検査士が検査を行い,記録した画像を“肝腫瘤の超音波診断基準”に基づいて,超音波専門医を中心とした消化器専門医が読影,診断した.症例によっては,診断確定のために造影CTあるいはMRIを施行した.なお,腫瘍径の経過を検討するにあたり,静止画像を見直し同一と確定できない病変や,他の画像診断で血管腫と診断されていない腫瘍径1cm未満の病変は除外した.観察期間は120か月から303か月,平均197か月(16年5か月)であった.年齢は平均62.2歳で,男性56例,女性20例,2011年の腫瘍径は7〜64mm(平均19mm),CT,MRでも診断ありは21例,肝機能異常ありは8例,HBs抗原またはHCV抗体陽性は7例であった.腫瘍径の変化は,測定誤差を少なくするため,初回指摘後2回分の平均腫瘍径と2011年より前2回分の平均腫瘍径の差を変化とし,全経過の変化率を算出し,それを元に10年間あたりの変化率を算出し10年変化率とした.観察期間は120か月から303か月,平均197か月であった.腫瘍径の変化率は1)有意な増大,変化率が+50%;2)軽度増大,変化率が+25%より+50%;3)不変,変化率が+25%より−25%;4)縮小,変化率が−25%の4つに分類した.
【症例】
50歳代男性.肝機能異常なし,HBs抗原およびHCV抗体は陰性.1998年に肝右葉前区域に29mmの腫瘤を認め,肝血管腫と診断.その後腫瘍径は徐々に増大し,2011年の腫瘍径は64mmとなった.この時点でMRIと造影CTを行い肝血管腫と再確認された.10年変化率は+75.9%,全経過(12年9か月)変化率は+96.8%であった.
【結果と考察】
80病変について全経過での変化率は−42.6%から+200.0%,平均+39.8%で,1)有意な増大は29病変(36.3%),2)軽度増大が16病変(20.0%),3)不変が32病変(40.0%),4)縮小が3病変(3.8%)であった.10年間の変化率に換算すると−19.0%から+112.9%,平均+24.6%で,1)有意な増大は13病変(16.3%),2)軽度増大は22病変(27.5%),3)不変は45病変(56.3%)で4)縮小例はなかった.有意な増大または軽度増大の割合を10年間の変化率とそれ以上(平均16年5か月)の全経過変化率で比較すると,43.8%(35/80病変)から56.3%(45/80病変)と増加がみられ,観察が長期になることにより増大として認められる割合は増加してくると考えられる.
【結論】
肝血管腫の10年以上の経過観察で,緩徐ではあるが約半数(56.3%)に+25%以上の増大傾向を認めた.