Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓2

(S555)

孤立性胆管過誤腫の1例

A case report of solitary von Meyenburg complex

菱田 光洋, 杉本 博行, 猪川 祥邦

Mitsuhiro HISHIDA, Hiroyuki SUGIMOTO, Yoshikuni INOKAWA

名古屋大学大学院消化器外科学

Gastroenterological Surgery, Nagoya University

キーワード :

【症例】
74歳女性
【既往歴】
糖尿病,脂質異常症,白内障
【経過】
右上腹部痛を主訴に近医受診し,精査にて胃壁外発育型GISTと診断され,その際,肝S8に結節性病変が指摘された.肝病変は,Dynamic CTでは約1cmの境界明瞭な低吸収域で,造影効果も乏しい所見であった.EOB MRIでは,T1強調像で低信号,T2強調像で軽度高信号,拡散強調像で軽度高信号,動脈相で辺縁に軽度の造影効果を認め,門脈相〜遅延相では低信号,肝細胞相でも低信号を呈する所見であった.腹部超音波検査では,グリソンに接する約1cmの境界明瞭な腫瘤を認め,辺縁が厚く高エコーを呈し,中心は低エコーを呈していた.造影超音波検査では,血流は周囲肝組織とほぼ同等で,後血管相でも辺縁は高エコー,中心は低エコーを呈していた.CT,MRI所見では血管腫や嚢胞変性を来した転移の可能性が考えられたが,超音波所見では,両方とも否定的であった.確定診断のため手術時に肝生検を施行し治療方針を決めることとした.胃GISTに対する胃局所切除術を施行後,同開腹創より肝S8病変に対し超音波ガイド下肝生検を行った.迅速病理診断では悪性所見を認めず,手術を終了した.病理組織を検討すると,胆管の増生と線維結合織の増生よりなる結節を認める所見であり,他の画像所見も含め胆管過誤腫と診断した.以後同病変は変化を認めず,肝臓に新たな病変の出現も認めていない.
【考察】
胆管過誤腫は,胎児期の胆管の発生異常に由来する過誤腫性病変といわれており,肝の腫瘍類似病変に分類されている.通常は無症状で経過するため剖検時や肝生検時に偶然発見される場合が多い.肝両葉に散在性にみられることが多く,その大きさは比較的小さくかつ大小不同である.腹部超音波検査では,胆管過誤腫は内部に濃縮された胆汁を含むため,基本的には内部が均一な無エコーに描出されるが,嚢胞腔が小さいと高エコーの結節として描出されることがある.また,不均一な高エコーパターンは,小嚢胞の前後壁の間および増生した線維性間質による多重反射のため生じると考えられている.今回の症例では,CT,MRIでこれまでに報告されているような特徴的な所見を有していたが,孤立性であり,肝転移を否定する決め手とはならなかった.一方,超音波検査では周囲グリソン組織と同様の所見を認め,転移や血管腫を否定する一助になり得たと考えられた.
【結語】
今回我々は,胃GISTの肝転移との鑑別が困難であった孤立性胆管過誤腫の1例を経験したので報告した.