Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓1

(S552)

閉塞性黄疸が肝血流動態におよぼす影響〜造影USを用いた前向き研究〜

Evaluation of hepatic blood flow balance using At-PI with occlusive jaundice

和久井 紀貴1, 2, 武田 悠希1, 山内 芳也1, 團 宣博1, 2, 朝井 靖二1, 植木 紳夫1, 大塚 隆文1, 2, 大場 信之1, 西中川 秀太1, 児島 辰也1

Noritaka WAKUI1, 2, Yuki TAKEDA1, Yoshiya YAMAUCHI1, Nobuhiro DAN1, 2, Yasutsugu ASAI1, Nobuo UEKI1, Takafumi OTSUKA1, 2, Nobuyuki OBA1, Syuta NISHINAKAGAWA1, Tatsuya KOJIMA1

1東京労災病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院消化器内科

1Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Rosai Hospital, 2Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

肝臓の供給血管は門脈と肝動脈の2本であり,門脈は肝細胞に栄養やさまざまな物質を供給し,肝動脈は主に胆道系の栄養を司っている.門脈は肝細胞への栄養血管であるがゆえ肝臓にとってより重要でありその供給量が多く,全体の約7-8割とされている.一方,圧は動脈が100mmHg以上であるのに対し,門脈は6-8mmHgと極めて低値である.低圧系の門脈血を類洞へ多く流入させるため,その調節機構として終末胆管周囲の前毛細血管括約筋(precapillary sphincter:PS)が存在し動脈血の類洞内への流入を調節している.
胆管に何らかのトラブルが起きた場合,PSが影響を受けて門脈・肝動脈血流バランスが崩れ,高圧系の肝動脈血が流入しやすくなる可能性がある.
【目的】
閉塞性黄疸患者における黄疸期と黄疸改善期の肝実質血流動態の変化,特に門脈・肝動脈の血流バランスの変化をArrival-time Parametric Imaging(At-PI)で検討し,閉塞性黄疸が肝血流に与える影響について明らかにする.
【方法】
2013年4月から11月までに結石や腫瘍により閉塞性黄疸を来し入院した患者を対象とした.入院後,減黄術を行う前の黄疸期に超音波検査を施行.その後,適切な減黄術を行い,黄疸改善後に再度超音波検査を行った.閉塞性黄疸の基準は総ビリルビン値5.0 mg/dl以上を対象とし,改善期は総ビリルビン値が正常上限2倍以内まで改善したものとした.超音波装置はGEヘルスケアジャパン社製LOGIQ E9 XDclearと3.5 MHZコンベックスプローブ(C1-6)を使用し,MI値0.22〜0.28,focus 8〜10cmに調節した.造影モードをamplitude modulationで設定した後,推奨量のSonazoidを静注し右肋間走査で肝S5-6領域と右腎臓の染影動態を40秒間動画で記録した.記録した動画から,右腎染影開始を0基点とした肝全体の染影arrival timeの平均値を試作ソフトウェアで算出した.黄疸期と改善期の平均arrival timeを比較しその差異について統計学的に検討した.
なお常用飲酒症例,心疾患や腎疾患のある症例は対象から除外した.閉塞原因については超音波やCT,MRI等の画像検査所見,および血液生化学検査を加味して総合的に判断した.本研究は当院倫理委員会の承認のもと全症例,文章にて同意を得て前向きに検討を行った.
【結果】
エントリーは7症例であった.そのうち1症例は減黄術後に敗血症を併発し,入院7病日に死亡したため減黄後まで超音波検査を施行し得た6症例が対象となった.内訳は男性3例,女性3例,平均年齢は84歳.原因疾患は総胆管結石が3例,膵頭部癌が2例,胆管癌が1例.黄疸期の総ビリルビン値は6.7 mg/dl(5.0-8.7),直接ビリルビン値5.5 mg/dl(4.3-7.2)であった.黄疸期の平均Arrival timeは2.6±2.2秒で改善期は7.2±2.0秒であり,改善期に比べて有意に黄疸期の平均Arrival timeは短い結果であった(p=0.028).
【結語】
閉塞性黄疸は門脈・肝動脈の血流バランスに影響を及ぼす因子の一つである可能性が示された.