辻 望¹, 今吉 由美¹, 髙木 優¹, 安田 慈¹, 乙部 克彦¹, 川地 俊明¹, 熊田 卓², 豊田 秀徳², 多田 俊史², 安田 鋭介³

Nozomi TSUJI¹, Yumi IMAYOSHI¹, Yu TAKAGI¹, Shigeru YASUDA¹, Katsuhiko OTOBE¹, Toshiaki KAWACHI¹, Takashi KUMADA², Hidenori TOYODA², Toshifumi TADA², Eisuke YASUDA³

¹大垣市民病院形態診断室, ²大垣市民病院消化器内科, ³鈴鹿医療科学大学放射線技術科学科

¹Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, ²Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital, ³Department of Radiological Sciences, Suzuka University of Medical Science

キーワード :

【目的】
肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法（RFA）では，焼灼にともない肝硬度の変化することが予測される．これをRFAの焼灼効果の判定に利用する可能性を想定して，RFAによる肝硬度の経時的変化の基礎的検討を行った．
【方法】
牛の肝臓にRFAを施行し，肝硬度を経時的に測定した．測定には組織弾性を定量的に測定することができ，検査者依存性が少ないShear Wave Elastography（SWE）を用いた．RFA前に牛の肝臓のSWEを測定した後，Cool-tip20mm電極針を60度の角度で，先端が1.5cmの深さに穿刺し，30秒・1分・1分30秒・2分・3分・4分・6分の6回RFAを行った．それぞれの焼灼後肝組織において，電極針の短軸画像にて針中心から肝表面と平行な0.5cm・1.0cm・1.5cmの3点の硬度と最高硬度を3回ずつ計測した．なお肝硬度の測定は，焼灼した肝組織を8時間冷所に保存し，RFAによる気泡の消失を待って行った．
【結果】
測定結果を図1に示す．針中心から0.5cm点では，肝硬度は2分までは経時的に上昇し，それ以降は検出しにくくなった．1.0cm点では3分までは経時的に硬度が上昇し，それ以降に大きな変化は認められなかった．1.5cm点では焼灼時間にともなう大きな変化は認められなかった．最高硬度は，2分までは経時的に上昇したが，それ以降は大きな変化は認められなかった．
【考案】
肝硬度は電極針の中心より順に経時的に上昇しており，RFAにより肝は電極針を中心として同心円状に焼灼されていることが示された．また焼灼範囲外（1.5cm）では肝硬度の大きな変化はなく，焼灼範囲を越えて焼灼されていないことが確認された．一方，肝硬度はRFA開始後2〜3分で定常状態となっていた．従来のRFAの焼灼時間を考えれば，今回の実験結果からは肝硬度の測定によってRFAの焼灼効果を判定するのは困難である可能性が示唆された．今後病理所見とも対比してSWEによる肝硬度と焼灼効果の関連を検討する．