Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道1

(S543)

高周波プローブを用いたソナゾイド造影超音波検査における胆嚢隆起性病変の検討

Examination of the gallbladder tumor in the Sonazoid-enhanced ultrasonography with High frequency probe

中村 俊一, 菅原 司, 岩間 寛, 野瀬 弘之, 我妻 武士

Shunichi NAKAMURA, Tsukasa SUGAWARA, Hiroshi IWAMA, Hiroyuki NOSE, Takeshi AZUMA

JA北海道厚生連網走厚生病院医療技術部放射線技術科

Department of Radiological Technology, Abashiri Kosei General Hospital

キーワード :

【目的】
ソナゾイド造影超音波は肝腫瘍における病変検出と鑑別診断に加えて,肝がんの治療支援,治療効果判定などに広く使用されている.一方,保険適応外ではあるが,肝以外の腹部臓器診断への臨床応用と評価が医師主導型の臨床研究として行われ,高い有用性が明らかになってきている.今回我々は,超音波検査にて比較的遭遇する機会の多い,胆嚢隆起性病変の鑑別診断を目的としてソナゾイドを用いた造影超音波検査の有用性について検討したので報告する.
【対象】
2008年10月より2013年1月までに当院にて造影超音波を施行し,病理学的または総合画像診断にて診断が確定した胆嚢ポリープ10例,胆嚢腺筋腫症9例,胆嚢癌4例である.
なお,本検討は院内倫理委員会承認のもと,主治医より十分なインフォームドコンセントを受けた患者に行われ,臨床画像の使用に関しては,すべて匿名化し解析を行った.
【方法と検討項目】
Bモードにて胆嚢隆起性病変の最大断面になる部位を描出し,造影モードに切り換えてソナゾイドを0.5ml投与し,低音圧連続送信にて観察を行った.Mechanical Indexは0.2〜0.3,frame rate 15〜30fps,focus pointは病変の下端1cmに設定した.
各疾患における染影パタンと輝度変化曲線(TIC:Time Intensity Curve)を検討し,疾患別における輝度値の中央値,最大値(PI:Peak of intensity),輝度値が最大となるまでの時間(TPI:Time to peak intensity)を算出した.ログ変換式はy=10log10Xを用い,輝度情報はデシベル値表示を使用した.また統計解析処理はMann-Whitney U検定による有意差検定を行い,P値0.05以下を有意差ありと判定した.
【結果】
胆嚢隆起性病変の染影パタンは線状型(linear type),点状散在型(scattered type),点状びまん型(diffuse type),樹枝状型(branched type)の4型に分類された.
染影パタンにおける疾患別内訳では線状型は7例(70.0%)に認め,全例が胆嚢ポリープであった.点状散在型は8例(88.9%)に認め,全例が胆嚢腺筋腫症であった.点状びまん型は3例に認め,胆嚢ポリープ2例,胆嚢腺筋腫症1例であった.樹枝状型は5例に認め,胆嚢ポリープ1例,胆嚢癌4例(100%)であった.
また輝度値の中央値,PI,TPIは胆嚢ポリープ,胆嚢腺筋腫症の良性疾患と胆嚢癌との間に有意差を認めた(P<0.01).
【考察】
今回の検討ではリアルタイムに病変内の詳細なflow imageの観察が可能であり,胆嚢癌では腫瘍血管の蛇行,屈曲などが描出され不均一な染影効果を認めた.胆嚢腺筋腫症では造影後にRokitansky-Aschoff sinusを明瞭に描出することができ,確診所見として有用であった.また病変内のTICを作成し,PIやTPIを算出することにより,病変特有の血流動態を客観的に評価できる可能性が示唆された.
【結語】
胆嚢隆起性病変に対する超音波診断としては従来の形態学的診断が基本ではあるが,ソナゾイドを用いた血流診断を加えることにより,リアルタイムに病変内の詳細なflow imageの診断が可能になると考えられた.また染影パタンとTICを組み合わせることで胆嚢隆起性病変のより客観的な良悪性の鑑別診断に有用な検査になりうる可能性が示唆された.