Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能1

(S524)

透析患者において収縮末期エラスタンスは前負荷に依存しな左室収縮性の指標になる

Echo-Derived End-Systolic Elastance is Useful to Estimate Load-Independent LV Contractile Function in Patients Receiving Hemodialysis

小保方 優, 根岸 一明, 黒沢 幸嗣, 増田 くに子, 反町 秀美, 舘野 利絵子, 倉林 正彦

Masaru OBOKATA, Kazuaki NEGISHI, Koji KUROSAWA, Kuniko MASUDA, Hidemi SORIMACHI, Rieko TATENO, Masahiko KURABAYASHI

群馬大学大学院医学系研究科臓器病態内科学

Department of Biological and Science, Gunma University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
左室収縮性は前負荷に依存せず,前負荷が変化しても一定である.維持透析患者では透析間に前負荷が大きく変化するため,前負荷に依存する収縮性の指標である左室駆出率Left Ventricular Ejection Fraction(LVEF)では正確な左室収縮性の評価が困難である.一方,End-systolic elastance(Ees)は前負荷に依存しない左室収縮性の指標であり,心エコー図を用いた非観血的なEesの推測が提唱されている.しかし,維持透析患者においてEesをvalidationした報告はない.
【目的】
本研究の目的は維持透析患者において,心エコー図で算出したEesが前負荷に非依存性であるかを検討することである.
【方法・結果】
80例の維持透析患者に対して,以下のように3回心エコー図を施行した:透析終了直後;透析終了48時間後;透析終了72時間後.左室収縮能の指標をEes(血圧,心拍出量,LVEF,前駆出時間,駆出時間から算出),LVEF,僧帽弁輪部収縮期運動速度(Sʻ),preload-recruitable stroke work(PRSW:心拍出量,平均血圧,心筋重量,左室拡張末期容積から算出)とし,左室拡張末期容積を前負荷の指標とした.左室収縮能の指標が前負荷の増減とともに変化するかを検討した.維持透析患者の年齢は平均61±9歳で75%が男性,36%が糖尿病性腎症であった.
左室拡張末期容積は透析後から72時間にかけて有意に増加し,1回心拍出量も同様に有意に増加し,維持透析患者における正常なFrank-Starling機序と考えられた(左室拡張末期容積:67±25ml, 87±28ml, 94±30ml, overall p<0.05: 1回心拍出量:41±13ml, 56±15ml, 61±17ml, overall p<0.05).前負荷の増大に伴って,EF,Sʻ,PRSWは透析後72時間で有意に上昇したが(each overall p<0.05),Eesだけは透析間で変化しなかった(Ees:4.8±2.4mmHg/ml, 4.9±2.0mmHg/ml, 4.9±1.8mmHg/ml, overall p=0.951).
【結論】
左室拡張末期容積は透析間で有意に増大したが,Eesは変化しなかった.この結果は,Eesが維持透析患者においても,前負荷非依存性の左室収縮性の指標であることを示唆する.