Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・心筋梗塞/心室瘤

(S516)

僧帽弁置換術後に発症した巨大左室仮性瘤の一例

A case of giant left ventricular pseudoaneurysm after artificial mitral valve replacement

繼 敏光1, 岩永 史郎2, 村田 光繁3, 馬原 啓太郎4, 加藤 泰之5, 高梨 秀一郎5, 井上 宗信1

Toshimitsu TSUGU1, Shiro IWANAGA2, Mitsushige MURATA3, Keitaro MAHARA4, Yasuyuki KATO5, Shuichiro TAKANASHI5, Soushin INOUE1

1日野市立病院循環器科, 2東京医科大学八王子医療センター循環器内科, 3慶應義塾大学医学部臨床検査医学, 4日本心臓血管研究振興会付属榊原記念病院循環器内科, 5日本心臓血管研究振興会付属榊原記念病院心臓血管外科

1Department of cardiology, Hino Municipal Hospital, 2Department of cardiology, Tokyo Medical University Hachioji Medical Center, 3Laboratory medicine, Keio University School of Medicine, 4Department of cardiology, Sakakibara Heart Institute, 5Department of Cardiovascular Surgery, Sakakibara Heart Institute

キーワード :

左室破裂や左室仮性瘤は僧帽弁置換術後の0.56%に起こる稀な合併症であり,生存率が低いと報告されている(57.4%).我々は,僧帽弁位人工弁の感染性心内膜炎に,再置換術を施行した1週間後に左室仮性瘤が形成された症例を経験した.症例は,10年前に生体弁(Mosaic)による僧帽弁置換術を施行された80代女性.1年前から心不全と発熱のため入退院を繰り返し,抗生剤投与を含めた内科的治療を受けていた.1ヵ月前から症状が増悪したため,当院を受診した.心エコー図検査で疣腫を認めず,血液培養も陰性であったが,生体弁変性による逆流を認め,人工弁感染を疑った.VCMとGMによる治療を開始したところ,解熱した.生体弁不全と中等度大動脈弁狭窄に対して,僧帽弁再置換術(MITRAI)と大動脈弁置換術(SJM Regent),冠動脈バイパス術(大伏在静脈-右冠動脈)を他院で施行した.術後1週目の心エコー図検査で左室後壁基部に開口部(9 mm)を持つ左室仮性瘤(径34×13 mm)を認めた.修復術を検討したが,本人が希望しなかった.5カ月後に瘤は径115×43 mmにまで拡大していた.本人の強い希望で退院したが,2週間後に自宅で突然死した.左室仮性瘤は心筋梗塞による心破裂で生じる場合が多いが,僧帽弁や大動脈基部の手術,外傷や感染性心内膜炎でも生じる.破裂部位によりⅠ型からⅢ型に分類される(Ⅰ型:左室後壁弁輪部,Ⅱ型:左室後壁乳頭筋付着部,Ⅲ型:Ⅰ型とⅡ型の中間位).本症例は左室後壁弁輪部に開口部を持つⅠ型である.僧帽弁置換術後には,弁輪部の過剰切除,過大なサイズの人工弁,左心房の過剰な牽引などが原因となり発症する.人工弁を摘出する際に脆弱となった弁輪組織を切除したことが主因と考える.Ⅰ型の死亡率は45%と報告されている.本疾患は術当日から術後10年まで様々な時期に発見される.死因としては拡大した瘤による左心不全,瘤破裂による出血ショックなどが考えられる.左室仮性瘤には修復術が不可欠と考える.