Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・血栓,卵円孔

(S512)

発症機転が不明な左室内血栓が原因と考えられた若年性心原性脳塞栓症の1例

One case of the juvenile cardioembolic that it was cnsidered to be caused by the left ventricle thrombus which onset is unknown

西條 良仁

Yoshihito SAIJO

徳島大学病院循環器内科

Cardiovascular Internal Medicine, Tokushima Universuty

キーワード :

【症例】
37歳,男性
【既往歴】
高血圧,脂質異常症
【家族歴】
父:脳梗塞,心筋梗塞
【現病歴】
20XX年10月某日,突然呂律障害及び左下肢の運動低下が出現し,当院ストロークケアユニットに緊急搬送された.
【現症】
身長:173cm,体重:97kg,BMI:32.4,GCS:E4V4M6,心拍数:106/min,血圧:148/97mmHg,左片麻痺NIHSS:7点
【血液検査】
PT-INR:10.2,APTT:26.3秒,ループスアンチコアグラント:1.29,抗カルジオリピンβ2抗体:139,プロテインC:98,プロテインS:0.7未満,JAK2mutation:陰性,BNP:696pg/m
【入院後経過】
頭部MRI検査にて右中大脳動脈領域の閉塞を認めた.心室性期外収縮が散発したために施行された経胸壁心エコー検査で,左室壁はびまん性に低収縮で左室駆出率は54%と軽度低下しており,左室内に30×20mm大の可動性に富む辺縁不整の腫瘤を認めた.腫瘤は下壁中隔の中部に付着しており,内部エコーは均一で先端に小さな紐状の構造物を認めた.心臓腫瘍あるいは血栓の可能性が考えられたが,いずれにしても更なる塞栓症や突然死の可能性が危惧され緊急腫瘤除去術が施行された.病理組織診断では,腫瘤は血液とフィブリン塊からなり血栓と診断され,腫瘍性病変は認めなかった.術後経過は良好であったが,第18病日に施行した経胸壁心エコー検査にて右房腔内に41×18mm大の壁在血栓と思われる異常構造物の出現を認め,第21病日のエコー検査では両側内頸静脈の血栓閉塞を認めた.冠動脈造影検査では,右冠動脈後下行枝の閉塞を認めたが,左冠動脈前下行枝及び左回旋枝に有意狭窄を認めなかった.
【考察】
左室内血栓の多くは左室収縮能低下を来す器質的疾患に併発する.本症例では,左室駆出率の軽度低下を認めたものの,冠動脈造影検査では血栓付着部位に有意狭窄や閉塞病変はなく,血液検査で血栓素因も証明できず,左室内血栓形成の機序は不明であった.巨大(>20mm)で可動性に富み有茎性の左室内血栓は塞栓症のリスクが高く,開胸手術を施行した報告が散見される.本症例のような若年性脳梗塞では,心房細動を認めなくても経胸壁心エコー検査によるスクリーニングを行うことが重要であると考えられた.