Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
小児/先天性心疾患

(S510)

小児期ムコ多糖症Ⅱ型の心臓超音波所見の特徴

Echocardiographic features in pediatric patients with mucopolysaccharidosis typeⅡ

若原 良平

Ryohei WAKAHARA

大阪市立大学医学部附属病院発達小児医学

Department of Pediatrics, Osaka City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
ムコ多糖症Ⅰ,Ⅱ,Ⅵ型では蓄積による心筋病変と弁膜症といった心病変を伴うことが知られている.一度肥厚した弁は酵素等の治療開始後も経年とともに弁膜症として進行しうるが,小児期からすでに存在する心病変と二次性に進行する弁膜症の変化は区別する必要がある.今回われわれは,幼児期から認めるムコ多糖症の心臓超音波検査による特徴について検討を行った.
【対象と方法】
2007年1月以後に当院で心臓超音波検査を行ったムコ多糖症Ⅱ型9例(M群年齢:4.9±2.3歳,身長:100.8±11.7cm,体表面積:0.75±0.16m2)の心病変について,性別,年齢,身長,体表面積をマッチさせたコントロール群14例(C群)と左室心筋重量(g/m2),相対的壁厚,左室拡張末期径(%of normal),左室内径短縮率,僧帽弁輪移動速度(中隔側,cm/sec),E/E`,僧帽弁流入血流速度(cm/sec),大動脈弁口弁輪比,簡易ベルヌーイ式による大動脈弁圧較差(平均および最大mmHg)について比較検討を行った.統計処理はスチューデントt検定を用いてp<0.05を有意差ありとした.
【結果】
左室心筋重量(以下M群vsC群126.2±17.7vs 103.7±7.1),相対的壁厚(0.30±0.04vs 0.21±0.03),左室内径短縮率(42.6±3.8vs36.7±2.8),僧帽弁輪移動速度(8.2±1.6vs 12.1±1.3),E/E`(13.2±3.6vs 8.7±1.1),大動脈弁口弁輪比(0.50±0.04vs 0.71±0.06),簡易ベルヌーイ式による大動脈弁圧較差(平均4.8±3.3vs 2.5±0.7最大11.0±6.8vs 6.2±1.8)で有意差を認めた.左室内径短縮率は従来報告されている基準値内であるが,M群でより高値であった.左室拡張末期径(1.02±0.07vs 1.04±0.03),僧帽弁流入血流速度(106.7±17.7vs 104.0±8.2)は有意差を認めなかった.また,酵素補充療法開始後も僧帽弁輪移動速度は改善を認めなかった.
【考察】
ムコ多糖症Ⅱ型では,僧帽弁や大動脈弁といった左心系の弁疾患を伴うが,弁膜病変は幼児期から進行し始める.逆流性病変は幼児期には顕著なものは少ないものの,僧帽弁の肥厚,硬化による影響と考えられる僧帽弁輪移動速度の低下は幼児期にすでに認められ,酵素補充によっても改善せず,後の経年による弁膜症の進行の原因と考えられた.
【結語】
酵素補充療法は弁膜症に効果があるとはいえず,変性が起こる前に開始することが重要と考えられた.酵素補充療法により生命予後の改善が期待できるが,現在軽度の変化であっても将来の弁膜症の進行について,心臓超音波による長期フォローが必要であると考えられた.