宮内 元樹¹, 出雲 昌樹², 鈴木 健吾², 木村 沙希子¹, 田端 千里¹, 桜井 正児¹, 辻本 文雄³, 明石 嘉浩², 信岡 祐彦³

Motoki MIYAUCHI¹, Masaki IZUMO², Kengo SUZUKI², Sakiko KIMURA¹, Chisato TABATA¹, Masaru SAKURAI¹, Fumio TUJIMOTO³, Yoshihiro AKASHI², Sachihiko NOBUOKA³

¹聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部超音波センター, ²聖マリアンナ医科大学循環器内科, ³聖マリアンナ医科大学臨床検査医学講座

¹Department of Laboratory Medicine US center, St.Mrianna University Hospital, ²cardiovascular medicine, St.Marianna University School of Medicine, ³Department of Laboratory Medicine, St.Marianna University School of Medicine

キーワード :

【背景】
膠原病患者において肺高血圧（pulmonary arterial hypertension: PAH）は予後不良因子の一つである．現在PAHの前段階と考えられる境界型PAH（平均肺動脈圧：21-24mmHg）に対する治療介入への試みがなされている．PAH診断のゴールドスタンダードは右心カテーテル検査（Right heart catheterization: RHC）による平均肺動脈圧測定であるが，侵襲的検査であるため，日常臨床において肺動脈圧推定のツールの一つとして，RHC前に経胸壁心臓超音波検査（Transthoracic echocardiography: TTE）による推定がなされている．しかしながら膠原病患者における境界型PAHスクリーニングの診断精度についての報告は少ない．
【目的】
今回我々は心TTEにおける境界型PAH診断精度について検討することを目的とした．
【方法】
2010年8月〜2013年6月の間に膠原病患者においてPAHが疑われ，RHCが施行された70名（男性11名，女性59名　平均年齢58.6±16.0歳）を対象とした．東芝社製Artidaを用いて心臓超音波検査を施行し，三尖弁逆流圧較差（Tricuspid regurgitant pressure gradient: TRPG）及び推定肺動脈収縮期圧（Pulmonary artery systolic pressure: PASP）を計測し，RHCとの比較を行った．
【結果】
全患者のうちPAH：22名（31％），境界型PAH：15名（21％）であった．PASPRHCとPASPTTE間には良好な正相関を認めた（R=0.47，P＜0.001）．PASPRHCとPASPTTEとの誤差は平均2.60±9.78mmHgであった．ROC解析によるPAH診断精度はPASPTTE: 40.6mmHgをカットオフとし感度85.4％，特異度86.4％，であった．境界型PAH診断精度はPASPTTE: 37.4mmHgをカットオフとし，感度78.7％，特異度73.0％，TRPG: 35mmHgをカットオフとし感度85.2％，特異度81.2％であった．
【結論】
TTEにより境界型PAHを精度よく検出することが可能であると示唆された．