渡邉 晶子^{1, 2}, 岩城 咲乃¹, 薬袋 正恒¹, 西村 裕之¹, 竹内 真一¹, 立花 克郎²

Akiko WATANABE^{1, 2}, Sakino IWASHIRO¹, Masatsune MINAI¹, Hiroyuki NISHIMURA¹, Shinichi TAKEUCHI¹, Katsuro TACHIBANA²

¹桐蔭横浜大学大学院工学研究科医用工学専攻, ²福岡大学医学部解剖学教室

¹Graduate school of Biomedical Engneering, Toin University of Yokohama, ²School of Medicine, Anatomy, Fukuoka University

キーワード :

【はじめに】
近年，集束超音波を用いた脳腫瘍の治療を目的として経頭蓋MRIガイド下集束超音波治療tcMRgFUSが研究されるようになり，海外においては既に臨床応用も行われている．この治療法は，経頭蓋的な低侵襲治療であること等の利点がある．しかし，集束超音波で生じる凝固性壊死による炎症反応で，がん細胞の周囲にある正常な脳細胞にもダメージを与える可能性が危惧される．特に，悪性度が高く浸潤性の脳腫瘍などにおいては，既存の超音波治療では完治は困難であると考えられる．当研究室では，脳腫瘍治療への応用を目指し，脳腫瘍細胞の一種である神経膠芽腫細胞株U-87MGの増殖を抑制する超音波照射条件について検討を行っている［1］．今回は，超音波とマイクロバブル超音波造影剤（ソナゾイド）との併用が細胞生存率に与える影響について検討した．
【実験】
U-87MGを当研究室製の小型の音響窓付き細胞培養フラスコに播種し，細胞培養用培地MEMを加えてCO₂インキュベーター内に静置して培養した．48時間培養後，U-87MGが培養された音響窓付き細胞培養フラスコ（培地200μL）に超音波造影剤のソナゾイド（第一三共）懸濁液を10μL添加し，当研究室製の周波数150 kHzの定在波超音波照射システムの音場内に設置した．連続波超音波を15秒間照射した後のU-87MGの細胞数を，超音波照射直後から2時間毎に数えて生存率を算出した．
【結果】
超音波照射からの経過時間と超音波照射を受けたU-87MGの細胞生存率との関係をFig. 1に示す．超音波照射システム底部のステンレス製振動板に装着されたランジュバン振動子への印加電圧を約30 V以上とした場合，超音波照射直後より生存率が80％以下に減少した．約26 V以下では超音波照射直後の生存率はほぼ100％であったが，その後緩やかに減少した．印加電圧によって，生存率が異なることがわかった．マイクロバブルと超音波を併用することで，従来の超音波のみを用いた場合［1］よりも神経膠芽腫細胞の生存率の減少を誘発する超音波エネルギーを約15 dB低く抑えることが可能となった．
［1］A. Watanabe et al.: to be published in Acoust. Sci. & Tech.