英文誌(2004-)
一般口演 基礎
血流計測
(S482)
新しい血流映像法〜SMI〜
New Blood Flow Imaging -SMI-
佐藤 武史, 柴田 千尋, 川岸 哲也
Takeshi SATO, Chihiro SHIBATA, Tetsuya KAWAGISHI
東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部
Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical Systems Corporation
キーワード :
【はじめに】
従来のカラードプラ法で低流速の血流を観察する場合に,フレームレートが遅い,組織からのモーションアーティファクトが大きい,という問題があった.今回,高フレームレートでモーションアーティファクトを大幅に低減した新しい血流映像法SMI(Superb Microvascular Imaging)を開発したので報告する.
【方法】
従来のカラードプラ法では1フレーム内でBモード用および血流用のスキャンを完結してから1フレームの画像を出力している.SMIではスキャンと信号処理の単位を独立に最適化することで,高フレームレートの血流像の表示を可能にする.更にSMIではモーションアーチファクトの特徴を解析して分離することで,モーションアーティファクトの陰に隠れた血流の表示を可能にする.表示方法としては,従来のADFと同様にBモード像の上に血流のパワーと方向を表示するcSMI(color coded SMI)と,ROI内はBモード表示せずにグレースケールで血流のパワー像を表示するmSMI(monochrome SMI)の2種類がある.東芝メディカルシステムズ社製超音波診断装置AplioTM500を改造した装置でSMIの評価を行った.
【結果】
3.75MHz腹部コンベックスプローブで折り返し速度が2.6cm/sの条件で肝臓をスキャンし,ADFとcSMIを比較した.ADFではモーションアーティファクトが画像全体に現れるのに対して,cSMIではモーションアーティファクトはほとんど見えない.フレームレートは,ADFが13fps,cSMIが50fpsである.cSMIはプローブの動きにすぐに追従し,プローブを動かしてもモーションアーティファクトがほとんど発生しない.mSMIにすると,cSMIでは観察できなかった微細な血流が見えてくる.mSMIでは装置が閾値設定をせずにすべての信号を表示するためである.次に,超音波造影剤SonoVueRの入ったファントムを従来のCHI(PS法)と音圧を落としたmSMIで比較した.PS-CHIでは流れのない状態でもバブルや組織が見えるが,mSMIでは静止状態では何も見えずに流れのある状態でバブルのみが見えた.
【結語】
SMIは低流速の血流をモーションアーティファクトの影響をあまり受けることなく表示可能である.SMIはフレームレートが高いのでプローブを動かした時の追従性が良く,血流の観察にストレスを与えない.まずcSMIでオリエンテーションを付けて,次にmSMIで微細な血流を観察する手順が良好である.今まで見ることが難しかった腫瘍血流,炎症性血流等の観察に期待が持てる.また,SMIは超音波造影剤が入った臓器において動いているバブルのみを映像化するので,造影下での血流の映像法としても期待できる.