Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
画像解析

(S476)

粒子線治療支援のための超音波オプティカルフローによる臓器変位の評価システム

Evaluation system of tissue displacement by ultrasonic optical flow for radiotherapy

香取 裕志1, 砂口 尚輝1, 山越 芳樹1, 久保田 佳樹2, 渋谷 圭3, 金井 達明2

Yushi KATORI1, Naoki SUNAGUCHI1, Yoshiki YAMAKOSHI1, Yoshiki KUBOTA2, Kei SHIBUYA3, Tatsuaki KANAI2

1群馬大学大学院理工学府理工学専攻電子情報・数理教育プログラム, 2群馬大学重粒子線医学研究センター物理学部門, 3群馬大学大学院医学系研究科放射線診断核医学

1Department of Electronics and Informatics, School of Science and Technology, Gunma University Graduate, Japan, 2Department of Physics, Heavy Ion Medical Center, Gunma University, Japan, 3Department of Diagnostic Radiology and Nuclear Medicine, School of Medicine, Gunma University Graduate, Japan

キーワード :

【目的】
粒子線治療では呼吸により病巣が大きく変動するため,照射前に4DCTにより患部付近に埋め込んだ金属マーカーから変動を推定し照射マージンを決めている.しかし,この方法では病巣各部の位置変動を直接見ていないため,超音波で病巣を描出し各部の位置変動を推定する手法と組み合わせることで照射精度をさらに向上できると考えられる.本稿では,3次元超音波映像に対してオプティカルフローを適用し実時間で病巣の変位を評価する方法を検討したので報告する.
【方法】
3次元超音波映像装置を用いて直交2断面での超音波像を撮像し,コーナーやエッジ等の特徴点を抽出後Pyramidal Iterative Lucas-Kanade法により運動軌跡を求める.これは画像の特徴点の軌跡を多重空間分解能でのオプティカルフローにより求める方法で,スペックルなど画像の特徴が移動前後で変化してしまう場合に対しても比較的安定して軌跡を推定できるという特徴がある.パラメータとして,特徴点検出の感度と探索領域の大きさがあるが,これは予めファントム実験により最適化した.粒子線の照射は呼吸同期で行われるため,呼吸ごとの患部の動きを評価することが重要になる.このため臓器変位のトラッキングだけでなく,粒子線照射のマージンを決めるときの指標になるように最大腹壁変位時など呼吸のリズムに合わせて得た超音波像に対して呼吸ごとの位置ずれを求め表示できるようにした.
【実験結果】
寒天ファントム(グラファイト濃度1.0%,寒天濃度1.5%)を移動させて得た超音波像を用いて本方法による位置ずれ検出精度の評価を行った.この実験では,3mmの移動に対して推定誤差は8.6%であった.図は肝臓に対して呼吸の4周期分にわたって取得した腹壁変位最大振幅時(a)と最小振幅時(b)の変位マップである.図(b)の最小振幅時よりも図(a)の最大振幅時のほうが呼吸間での位置ずれが少ないことが分かる.この時の臓器変位を求めたところ,腹壁変位最大振幅時で平均1.4mm標準偏差0.29mm,腹壁変位最小振幅時で平均6.0mm標準偏差3.8mmであった.
【まとめ】
粒子線治療の支援システムとして,3次元超音波映像装置で得た画像からオプティカルフロー法を用いて呼吸の時相ごとの臓器の位置ずれを評価するためのシステムを構築した.ファントム実験での精度評価では誤差は8%程度であり,粒子線照射の照射マージン決定時の1つの指標として役立つものと考えられた.