金山 侑子, 渡辺 正毅, 川岸 哲也, 掛江 明弘

Yuko KANAYAMA, Masaki WATANABE, Tetsuya KAWAGISHI, Akihiro KAKEE

東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
音響放射力を利用したせん断波イメージングは，硬さの絶対値を測定する手段として注目されている．用手的加振を利用した歪みイメージングと比べて検者の手技に依存しないという利点が主張される一方，フレームごとに結果がばらついたり，まだらな硬さを呈する場合に硬さの代表値を決めるのが困難であるという報告もある．本報告では，表示されたせん断速度の信頼性を評価するための新しい表示モードを提案する．
【手法】
試作装置はTUS-500A，探触子はPVT-375BT，PLT-1005BT．ROIを一定幅の小ブロックに分割し，各ブロックの左端においてpush pulseを照射してせん断波を発生させ，その伝播をブロック内の走査線において観測し，各観測パルス間のドプラシフトから変位の時間変化を算出した．各深さにおいて隣り合う二点間で変位時間曲線の相互相関からせん断波到達時間を求めた．さらに，各深さにおいてラテラル方向に全ブロックの到達時間を積算することにより，ROI左端から一つのせん断波が伝播したと仮定したときに観測される到達時間画像を得て，さらに等しい到達時間の場所を線で結んだ到達時間等高線画像を作成した．エラストQAファントム（Model 049，CIRS），健常者肝臓において本手法を適用した．
【結果】
ターゲットを含むファントムを対象としたせん断速度画像と到達時間等高線画像を図1に示す．軟らかい領域では到達時間の等高線が密になっているが，これは軟らかい部分ではせん断速度が遅いので，ビーム間の到達時間の差が大きいためである．逆に，硬い部分では等高線間隔が広くなっていることが分かる．同様に肝臓における結果を図2に示す．おおむね均一なせん断速度画像が得られているが，低エコー域内や深部においてはせん断速度がまだらである．到達時間等高線画像を見ると，これらの部分では等高線が乱れており，せん断波の伝播が観測できていないと言える．これは，液体部分でせん断波が伝播していないこと，および深部においてはせん断波が観測できていないことを示している．
【まとめ】
本手法により，せん断速度画像の各位置において信頼性を確認できる．硬さ計測の際に計測位置を決定する際に検者依存性を低減し，確信度を向上させるとともに，肝実質や腫瘍内部においてせん断波の乱れを可視化することで新たな情報を提示できると期待される．