Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織音響特性

(S467)

超高周波を用いたラット臓器の音響特性計測

Measurement of acoustic characteristics of rat organs using ultra-high frequency

入江 奏1, 吉田 憲司2, 井上 健太1, 丸山 紀史3, 山口 匡2

Sou IRIE1, Kenji YOSHIDA2, Kenta INOUE1, Hitoshi MARUYAMA3, Tadashi YAMAGUCHI2

1千葉大学工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学研究院

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Graduate School of Medicine, Chiba University

キーワード :

1.はじめに
臨床現場において超音波診断装置を用いた定量診断法の確立が求められているが,現状では生体組織の組成や構造とエコー信号に含まれる情報との関係は十分に解明されておらず,エコー信号から定量的に組織の組成情報を取得することは困難となっている.そこで本研究では,エコー信号の性質を決定する主要因の一つである生体組織固有の音速および減衰と組織性状との関係について検討するために,性状の異なる複数のラット肝臓について高周波・高分解能の振動子を用いて計測・解析を実施した.
2.方法
中心周波数80 MHzのPVDF-TrFR振動子および250 MHzのZnO振動子を超音波顕微鏡システム(本多電子AMS-50SI)に組み込み,ラットの正常肝,脂肪肝,硬変肝,腎臓,脾臓,肺などの各臓器について計測を行った.摘出臓器をホルマリン固定後に10μmに薄切してプレパラート上に固定し,80 MHzおよび250 MHzの振動子を用いて試料表面から背面までのエコー信号を取得することで,音速および減衰を算出した.使用した振動子の方位分解能はそれぞれ20μmおよび4μmである.エコーデータは80 MHzが2.4 mm×2.4 mm,250 MHzが0.6 mm×0.6 mmの範囲を300 pixel×300 pixelで取得した.各ピクセルのデータは8 bitのデジタイザを用いて2 GHzでサンプリングされている.また,各試料の組織構造を確認するために,同試料を4μmに薄切し,HE染色またはAzan染色を施した.
3.結果と考察
各症例の計測結果において,80 MHzでは60μm×60μm,250 MHzでは12μm×12μmのROIをそれぞれ11箇所設定し,各音響特性についての平均値と標準偏差を算出した.正常肝,脂肪肝,硬変肝における音速はそれぞれ,1622±32,1591±20,1700±44[m/s],減衰はそれぞれ1.4±0.12,2.1±0.11,1.8±0.17[dB/mm]となり,ともに正常肝では文献値に近い値であるのに対し,脂肪肝および硬変肝では組織密度の高低に比例して音響特性が異なる値を取った.また,腎臓,脾臓および肺についても,特に250 MHzでの計測結果において各臓器の構造を音速および減衰の二次元像において光学顕微鏡像のように確認可能であり,両音響特性が組成の差異によって異なることが確認できた.