Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織音響特性

(S466)

超音波顕微鏡観察における金属イオン試薬添加を利用した観察法の検討(その2)

Examination of the observation method using metal ionic reagent in the ultrasonic microscope(part2)

小林 和人1, 山田 ひかり2, 別段 碧2, 高橋 健太3, 吉田 祥子2, 穂積 直裕4, 西條 芳文5

Kazuto KOBAYASHI1, Hikari YAMADA2, Midori BETSUDAN2, Kenta TAKAHASHI3, Sachiko YOSHIDA2, Naohiro HOZUMI4, Yoshihumi SAIJO5

1本多電子株式会社研究部, 2豊橋技術科学大学環境生命工学, 3豊橋技術科学大学電気電子情報工学, 4豊橋技術科学大学工学教育国際協力研究センター, 5東北大学医工学研究科

1R&D, Honda Electronics Co., Led, 2Department of Environmental and Life Sciences, Toyohashi University of Technology, 3Electrical and Electronic Information Engineering, Toyohashi University of Technology, 4International Cooperation Center for Engineering Education Development, Toyohashi University of Technology, 5Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【はじめに】
前回,超音波顕微鏡を用いた固有音響インピーダンス計測において,ラット小脳にCdCl2(100μM)を添加することにより神経細胞の音響インピーダンス値が増加することを報告した.活発に細胞分裂を行う癌組織は多くの亜鉛を必要とするため,今回は,亜鉛イオン試薬としてZnSO4(400μM)の添加効果を調べた.摘出したラットの肝臓癌組織に,ZnSO4(400μM))を添加し,癌組織の音響インピーダンスの変化を観察した.また,培養したグリア細胞及びグリオーマ細胞にZnSO4(400μM)を添加し観察したのでその結果を報告する.
【実験】
ZnSO4の添加効果を調べるため,超音波顕微鏡を用い,シャーレを基準とした組織の音響インピーダンスを観察した.癌化した組織として,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から肝細胞癌(HCC)を発症したマウスの肝臓を摘出した.ZnSO4(400μM)は,HEPESで希釈し,組織に添加した.使用周波数は120 MHz,測定範囲2.4 mm×2.4 mmとした.
最初,摘出した肝組織をシャーレに置き,音響インピーダンス測定を測定した.次に,そのまま,一分間試薬を添加し,試薬を取り除いた状態で再びすることで,同一組織の試薬添加前と試薬添加後の比較をした.また,測定後の組織をglypican 3抗体染色した.
培養したグリア細胞及びグリオーマ細胞には,周波数320 MHz,測定範囲0.3 mm×0.3 mmを用いた.肝組織と同様に,ZnSO4(400μM)を添加し,音響インピーダンスの変化を観察した.
【結果】
肝臓癌になったマウスにZnSO4(400μM)を添加した結果,癌細胞部位において,添加前と比較して音響インピーダンス値が0.02×10 6 N/m3増加した.また,音響インピーダンスの増加した部位は,glypican 3抗体染色した結果と,良い相関が得られた.
培養中のグリア細胞及びグリオーマ細胞にZnSO4(400μM)を添加した結果,グリア細胞は添加の前後で音響インピーダンスの変化は見られなかったが,グリオーマ細胞は添加して約3分後から音響インピーダンスが増加しはじめ,15分後に音響インピーダンスが安定する結果が得られた.
【まとめ】
超音波顕微鏡による音響インピーダンス測定において,亜鉛イオン試薬は,癌細胞の固有音響インピーダンスを増加させ,癌組織の分布を観察することができた.前回報告したカドミュウムイオンを添加することで神経細胞の音響インピーダンスの増加を観察できた結果も含め,超音波顕微鏡による音響インピーダンス観察では,金属試薬の利用が,生体組織の特定組織だけのコントラストを増強して,簡便に可視化するツールとなることが示唆できた.