Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
体表臓器 奨励賞

(S459)

乳癌術前のReal-time virtual sonography(RVS)を併用した2nd-look US評価の有用性

The impact of 2nd-look US with real-time virtual sonography(RVS)in the preoperative assessment of the extent of breast cancer

吉田 美和

Miwa YOSHIDA

愛知医科大学乳腺・内分泌外科

Breast and Endocrine Surgery, Aichi Medical University

キーワード :

【目的】
乳癌手術の切除範囲の決定に際しては,術前のマンモグラフィ(MMG),乳房超音波(US),乳房造影MRIによる乳癌の進展範囲の詳細な画像評価と,さらにこれらの画像情報を体表面で正確にマーキングする技術が必要とされる.Real-time virtual sonography(RVS)は磁気センサーによる位置追尾システムを用いて,US断面とそれに一致するMRIの再構築画像を同期させ,同一モニター上に描出することができる装置である.当院では従来の術前画像評価にRVSを併用したオリジナルのプロトコールに基づき,乳癌手術の切除範囲を決定している.本研究では,乳癌手術(2011/1〜2013/9)の術前評価でMMGと1st-look USでは検出されず,MRIでのみ検出する追加病変の2nd-look US評価におけるRVS併用の有用性を検討した.
【対象と方法】
術前の視触診・MMG・US評価と患者の希望より温存手術の適応を満たし,かつ造影MRIが禁忌でない乳癌患者118名に腹臥位両側乳房造影MRI(マンモコイル使用)を施行した.MRI追加病変を認めた場合,2nd-look USでその同定・評価を行った.同定困難な症例ではRVSを併用し,追加撮影した仰臥位片側乳房造影MRI(体表コイル使用)の再構築画像を同期させて2nd-look USを施行.2nd-look US/RVSで同定できた患側乳房のMRI追加病変をMultifocal/Multicentric/MRI-detected extensive diseaseの3つに分類し,Multicentric diseaseは術前にUS/RVSガイド下針生検でその組織型を確認した.針生検で良性と診断された症例を除き,MRI追加病変を含むよう切除範囲を拡大し,術前にUS/RVSを用いて体表面へのマーキングを行った.最終的に切除標本の組織所見より2nd-look US/RVS評価に基づく切除範囲の決定が適切であったかを検討した.
【結果】
腹臥位MRIにより118名中50名の患側乳房に53追加病変を検出した.これらのMRI追加病変の2nd-look USによる同定率は,RVSの併用なしでは43%(23/53)であったのに対し,RVSの併用により91%(48/53)へと向上した.MRI追加病変を検出した50乳房中42乳房で,2nd-look US/RVS±針生検所見に基づき切除範囲を拡大した(乳房切除23乳房,温存切除範囲拡大19乳房).組織学的検索の結果,乳房切除を施行した23乳房では全例に広範な乳管内病変を認め,2nd-look US/RVSの評価は適切であった.温存切除範囲を拡大した19乳房中16乳房においても,MRI追加病変に一致する乳管内進展または多発癌病変を認め,評価は適切だったが,残りの3乳房で2nd-look US/RVSの過大評価があった.結果的に,温存術後の切除断端陽性は95例中15例(16%)で,これらの大半はMRIによる検出困難なlow-grade DCISの不完全切除であり,浸潤癌成分の切除断端陽性は2例(2%)のみであった.
【結論】
乳癌術前のMRI追加病変の2nd-look US評価にRVSを併用することにより,MRIで得られた画像情報をより正確に評価および体表面へマーキングすることができ,その結果として,浸潤癌の不完全切除の著明な減少につながった.