Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
体表臓器 奨励賞

(S458)

超音波による声帯運動の評価方法の検討

Ultrasonography assessment technique of vocal fold movement〜horizontal method v.s. vertical method〜

福原 隆宏, 松田 枝里子, 北野 博也

Takahiro FUKUHARA, Eriko MATSUDA, Hiroya KITANO

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
ファイバースコープは声帯運動の評価に優れているが,少なからず侵襲がある検査である.一方,超音波は喉頭ファイバースコープに比べると侵襲が小さく,様々な診療科で使用され,汎用性の高い検査である.しかし,甲状軟骨に水平にプローブを当て声帯運動を見る従来の方法(ヨコ観察)では評価が困難なものもあり,ファイバースコープに比べその有用性は著しく劣っていた.このたびわれわれは,超音波による声帯評価について新たな評価方法を取り入れ,検討をおこなった.
【方法】
2013年9月より,声帯運動をファイバースコープで評価している患者のうち,当科で頭頸部領域の超音波検査を受けた患者97名を対象とした.頸部エコーをおこなうと同時に声帯の動きを以下の二つの方法で評価した:①プローブを頸部に対し水平に当てて声帯運動を評価する方法(ヨコ観察),②プローブを頸部に対して垂直方向で当て,声帯運動を評価する方法(タテ観察).ヨコ観察の測定方法は,甲状軟骨の正中に水平にプローブを当て,両声帯が水平断で見えるようにして声帯の動きをみた.タテ観察の測定法は,プローブを左右の甲状軟骨板に沿って頸部に垂直な縦方向に当て,左右それぞれ披裂軟骨の動きをみた.評価内容は,声帯の描出の可否と声帯の運動についておこなった.さらに,超音波で声帯が描出できない理由としては,軟骨の化骨や頸の太さなどが原因と推察し,性別,年齢,身長,体重,BMI,声帯麻痺の有無と描出の可否で相関を調べ,t検定もしくはカイ2乗検定をおこなった.次に,ファイバー所見を麻痺なし,麻痺,不全麻痺に分け,ヨコ観察とタテ観察による声帯運動の評価と所見が一致するかどうかを検討した.超音波機器はSiemens社のACUSON S2000を使用し,プローブは9L4,6.5MHzのリニア型を使用した.
【結果】
一側性声帯麻痺がある患者18名,声帯不全麻痺がある患者6名,麻痺のない患者73名であった.これらのうち,ヨコ観察で声帯の描出が不可であった症例は32名あり,一方タテ観察で描出不可は2名だけであった.ヨコ観察で声帯の描出可否に関する因子を検討すると,男性(P<0.001),身長が高い(P<0.001),体重が重い(P<0.001),麻痺あり(P<0.05)の因子で有意に描出不可となった.年齢とBMIでは有意差が出なかった.一方ファイバー所見との一致については,麻痺なし,麻痺の患者ではヨコ観察もタテ観察も描出可能症例においてはファイバー所見と一致した.しかし,不全麻痺の患者では,6名全てでヨコ観察では麻痺と評価し,タテ観察では動いていると評価していた.
【結論】
超音波で声帯運動の評価する場合,男性で体格の大きな患者では声帯の描出が困難である傾向があった.一方,新しい声帯の観察法:プローブを甲状軟骨板に沿って垂直方向に当て披裂輪状関節の動きをみる方法は,従来の声帯観察方法に比べ,感度が優れていた.しかし,不全麻痺の場合では,1方向の観察では評価が難しく,2方向での観察を組み合わせる必要があった.