Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
基礎 奨励賞

(S452)

Vector Flow Mapping計測信頼性に基づくVFM圧較差分布信頼性の推定

Estimation of VFM Pressure Distribution Validity based on VFM Measurement Validity

田中 智彦

Tomohiko TANAKA

株式会社日立製作所中央研究所

Central Research Laboratory, Hitachi Ltd

キーワード :

【背景】
心臓のポンプ機能である心機能は,心臓内の血流動態と密接に関連しており,血流動態を反映した指標による心不全診断への期待が高まっている.心臓内の血流速度ベクトルを算出することで血流動態を調べる手法はpcMRI(Phase Contrast Magnetic Resonance Imaging), Echo-PIV(Echocardiographic Particle Image Velocimetry), VFM(Vector Flow Mapping)などがあるが,非侵襲かつ,最も簡便な手法はVFMである.VFMは,超音波カラードプラ計測の1次元速度情報から,質量保存則を用いて2次元的な血流ベクトルを算出する手法である.VFMはその簡易性からも臨床応用が期待されているが,これまでVFMには計測精度検証の課題があった.
VFM速度低下の主要因は撮像面を通過する血流速度(面通過速度)の影響であり,これはVFM技術が心腔内の流れは撮像面内において2次元的であるという仮定を用いているためである.さらに,面通過速度は心臓形状および撮像断面によって変化するため,VFMの精度は計測毎の状況によって大きく変化する.すなわち,VFM精度は患者毎,計測毎に大きく変化する可能性があることから,臨床現場において得られたVFM精度は事実上未知となってしまい,これがVFM精度検証の課題であった.これを解決するために,著者らは計測毎のVFM精度を定量的に推定する技術(VFM計測信頼性定量化技術)を提案した.提案技術は確立された流速計(Particle Image Velocimetry; PIV)を用いた心臓ファントム実験によって検証され,これにより精度検証の課題解決に至った.
しかし,信頼性定量化技術は精度検証の観点に対しては目的を達成しているが,その臨床的な用途や有用性の観点に対しては検討の余地を残している.すなわち,VFMを用いた心不全診断応用には,VFMによる臨床指標の定量化が必須となり,VFM信頼性と臨床指標の信頼性との関係について明らかにしていく必要がある.
【目的】
本研究では,VFM計測信頼性定量化技術の臨床的な有用性の確立を目的として,VFMによって算出される圧較差分布に注目し,算出される圧較差分布の妥当性とVFM計測信頼性との関係について検討を行う.
【方法】
VFM計測のためのカラードプラ計測およびB-モード計測は汎用超音波診断機(日立アロカメディカル株式会社社製F75,セクタ探触子UST-52105)を用いて行い,VFM速度場は解析ソフトウェア(日立アロカメディカル株式会社社製DAS-RS1)を用いて算出した.対象は健常なヒトの左室内血流とした.得られたVFM速度場に対して運動量保存式を適用することで,左室内の圧較差分布を算出した.圧較差分布算出方法には,Navier-Stokes式を用いる方法(NSE法)と圧力ポアソン式を用いる方法(PPE法)の二通りを用いた.VFM計測信頼性を基に推定したVFM圧較差分布算出の信頼性に関する検討を行った.
【結果と考察】
NSE法とPPE法によって得られた圧較差分布は良好に一致することが確認された.VFM計測信頼性を基に,圧較差分布の信頼性評価を行ったところ,拡張早期においては,圧較差分布算出の信頼性は低下していることが示唆された.これは,拡張早期の急速流入をとらえるためのVFM時間分解能が十分ではないことに起因している.このように,定量化されたVFM計測信頼性を基にVFM指標の有効性を検討することが可能となることが示唆された.