Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
基礎 奨励賞

(S451)

適応型信号処理を用いた少数素子超音波経頭蓋骨血流速度法の基礎検討

Basic study of transcranial Doppler ultrasound with adaptive signal processing using a reduced number of probe elements

奥村 成皓1, 喜田 亜矢2, 瀧 宏文1, 佐藤 亨1

Shigeaki OKUMURA1, Aya KITA2, Hirofumi TAKI1, Toru SATO1

1京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻, 2坂井瑠実クリニック脳神経外科

1Graduate School of Informatics, Kyoto University, 2Neurosurgeon, Sakai Rumi Clinic

キーワード :

【はじめに】
くも膜下出血後の脳梗塞防止のためには,血管攣縮による血流速度上昇を見逃さないようモニタリングすることが重要である.非侵襲的なモニタリング方法として経頭蓋骨ドップラー(TCD)が用いられるが,頭蓋骨からの干渉波により測定が難しい.そこで我々は,少数素子アレイにMoving Target Indicator(MTI)フィルタと,空間領域干渉計法と適応型信号処理手法であるCapon法を用いて妨害波を抑圧し,頭蓋内血流速度推定の可能性について検討する.
【実験方法と結果】
空間領域干渉計法とCapon法を用いたイメージング法は,所望方向の出力を一定とした上で出力電力を最小化し,妨害波を抑圧する.本手法では各素子間の相関を表す相関行列の推定が必要である.一般には長時間平均または,相関行列の対角方向平均によって推定されるが,本研究では,TCDで要求される高時間分解能を達成するため,深さ・時間両方向へ相関行列の平均を行い,その値を推定する.TCDでは所望信号と妨害波の相関は小さいと考えられるため,相関行列を対角方向に平均する必要はない.
4素子から成る凹面アレイを想定し,送信波の中心周波数を2.0 MHz,パルス長を3.75 mmとした.素子間隔を5 mmとし,受信信号は並進運動する赤血球からの反射波と,頭蓋骨からの反射波から成るとした.2度間隔で50度,25 frames/s,最大測定深度15 cmで測定することを想定したため,時間方向の平均回数を8回とした.深さ方向の平均距離が3.75 mm,5.63 mm,7.5 mmにおける提案法の特性を比較した.
図1に示すように,従来法であるMTIフィルタとdelay and sum beamformingを用いた場合,妨害波に対する信号の強度が-35dB以下で血流速度推定精度が大きく劣化する.一方空間領域干渉計法とCapon法を用いた場合には速度推定精度が大きく改善し,深さ方向平均距離を5.63mm,7.5mmとした場合に信号対妨害波比が-45 dB以上のとき平均推定誤差が0.1m/s以下となった.平均距離は提案法の距離方向分解能と一致するため,本条件では平均距離を5.63mmとするのが適当であると言える.
【結論】
MTIフィルタとCapon法を用いた空間領域干渉計法により,4素子のリニアアレイで視野角50度,距離分解能5.63 mmの頭蓋内の血流速度推定が実現可能であることが示唆された.