田邉 将之¹, 内藤 優¹, 西本 昌彦¹, 劉 磊²

Masayuki TANABE¹, Yu NAITO¹, Masahiko NISHIMOTO¹, Lei LIU²

¹熊本大学大学院自然科学研究科・情報電気電子工学専攻, ²GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発部

¹Graduate School of Science and Technology, Kumamoto University, ²Ultrasound Engineering, GE Healthcare Japan Corporation

キーワード :

【研究目的】
膵石や腎石といった高反射物を血流計測モードで眺めると，キラキラと星のまたたきのように描出されるTwinkling Sign（TS）現象が報告されている［1］．本現象は発見当初より臨床への応用が期待され，近年においては早期乳がんなど微細石灰化の検出における有用性が指摘されている［2］．しかし，その発生メカニズムが十分には解明されていないため，未だ臨床への応用には至っていない．
先行研究により，照射音波のパルス繰り返し周波数（PRF）がTSの頻度に影響を与えることがわかっている．しかし，市販の診断装置では，PRFを変えるとWall Filterなど他の設定も連動して変化するため，PRFが微細石灰化の微少振動に直接影響を与えているのか，または装置内部のCFモードに使用されるフィルタの設定が変化したことでTSが描出されなくなるのか，正確な原因が不明であった．
著者らはこれまでに音波伝搬シミュレーションを行い，微細石灰化の内部および表面に弾性波が生じ，複雑なエコー信号が得られることを確認した［3］．さらに非生体実験において，各照射で得られたエコーの位相差を計算したところ，エコー信号中において±約180°の位相差が断続的に得られることがわかった［4］．
本研究では，PRFがTSに与える影響について詳細な検討を行うべく，超音波診断装置のCFモードにてTS表出部位のIQ信号の解析を行い，TS発生時にエコー信号に何が起きているか観察を行ったので報告する．

【方法】
5％wt濃度のゼラチン内に粒径1.394 mmのガラスビーズ（株式会社テックジャム）を内包させた．超音波装置にはGE社製LOGIQ S8およびML6-15-Dプローブを使用した．CFモード（Packet size:8）にてPRFを0.3，0.5，1.0，1.6，2.3，3.2，3.9 kHzと変化させた．各PRFにおけるTSの表出頻度を確認しながら，装置から100フレーム分のIQ信号を抽出した．その後，得られたIQ信号のパケット間において複素自己相関処理を行い，各フレームの位相差をオフラインで算出した．

【結果・考察】
PRFが0.3から1.0 kHzの範囲においてはTSが描出されたが，PRFが高くなるにつれてTSの頻度が減少する傾向が見られ，1.6 kHz以上ではほとんどTSを確認することができなかった．また，複素自己相関を算出したところ，TSの有無に関わらず全PRFにおいて同程度の位相差を検出した．本実験結果は，超音波診断装置内部のフィルタ設定がTSの減少に寄与していることを示唆している．しかし，TSの発生メカニズムは未解明であり，今後詳細な検討を行う．
【参考文献】
［1］A. Rahmouni, R. Bargoin, A. Herment, J. Radiology, 199，（1996）269.
［2］Luca Brunese et al., Journal of Ultrasound in Medicine, 2008，Volume 27，pp. 1187-1194.
［3］Masayuki Tanabe et al., Japanese Journal of Medical Ultrasonics, 2012，Volume 39，Supplement, p. 357.
［4］Masayuki Tanabe et al., Japanese Journal of Medical Ultrasonics, 2013，Volume 40，Supplement, p. 437.