Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 整形外科
シンポジウム 整形外科1整形外科における超音波診断の現況と未来

(S438)

外傷・脊髄

Trauma and Intraoperative Spinal Sonography

瀬本 喜啓

Yoshihiro SEMOTO

一般財団法人近江愛隣園今津病院整形外科

Orthopedic Surgery, Imazu Hospital

キーワード :

整形外科の外来診療における画像診断は,まずX線から始まるといっても過言ではない.軟部組織の外傷の診断は,レントゲンのストレステストや造影検査が行われてきた.しかし,直接軟部の描出ができるわけではなく,骨や造影剤の形状から間接的に損傷を推測するものである.またMRIは迅速性にかけ,小児や体内金属のある患者さんには使用できない.超音波検査は手軽で外来や屋外でも検査が可能であり,レントゲンでは描出できない筋や腱・靭帯の損傷,不全骨折,骨端線離開,なども検査することができる.X線に頼る診断は,骨の異常の有無にのみ目を奪われることとなりやすい.しかし,整形外科領域には当然ながら軟部組織の疾患や外傷も多く,これらの診断にはX線画像の描出力は極めて不十分であり,これに代わるものとして,あるいはこれを補うものとして造影検査や軟部撮影,MRI等様々な検査法が施行されている.しかしこれらの検査はいずれも日常の外来診療時に手軽に行なえるものではなく,X線被曝そのものが社会的にも大きな問題となりつつある.
術中リアルタイムに脊髄とその周辺部位の画像が得られる脊髄術中超音波診断法は,脊椎・脊髄手術に不可欠の検査法である.椎弓切除や脊柱管拡大術後に後方から脊髄を検査する方法と,椎間板切除や椎体亜全摘術後に前方から検査する方法とがある.Intraoperative spinal sonographyは,主に後方から椎弓切除後術野に脱気した生理食塩水を充満させ,脊髄には直接プローブを接触せず水中に浸した状態で観察する.使用するプローブは防水処置をほどこした高周波(7.5MHz以上)の特殊な術中プローブを用いる.
硬膜外から脊髄の性状や圧迫状況,脊髄内の状況,脊髄の拍動の程度を観察することにより,適当な手術手技の選択,除圧の効果,予後の推測を行うことが可能である.硬膜,馬尾,脊髄表面,椎体表面,椎間板表面は高エコーに,脊髄は中〜低エコーに,髄液,血液は無エコーに描出される.
本法の適応は,頚椎症性脊髄症,後縦靭帯骨化症,環軸椎亜脱臼,脊椎・脊髄腫瘍,脊髄空洞症,椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症,腰椎すべり症,脊椎骨折,脊髄損傷などである.