英文誌(2004-)
特別企画 胸部
シンポジウム 胸部1呼吸器領域の超音波
(S429)
肺癌胸膜浸潤の基準とその後の評価
Evaluation of pleural invasion of lung cancer based on the criteria of the Japan Society of Ultrasonics in Medicine
岩神 真一郎1, 檀原 高2
Shin-ichiro IWAKAMI1, Takashi DAMBARA2
1順天堂大学医学部附属静岡病院呼吸器内科, 2順天堂大学総合診療科
1Respiratory Medicine, Juntendo University Shizuoka Hospital, 2General Medicine, Juntendo University Graduate School of Medicine
キーワード :
原発性肺癌の病期は進展度を示すTNM分類によって決定される.中でもT因子は原発巣の主径だけでなく,胸膜浸潤の程度によっても異なる.例えば,原発巣が臓側胸膜へ進展していればT2,壁側胸膜まで進展していればT3となり,原発巣の大きさに関わらず,病期が変化し,しいては治療方針,予後に影響を与えることになる.つまり,原発性肺癌の胸膜への進展の正確な診断は,病期決定,適切な治療方針の選択,患者の予後予測の上で極めて重要といえる.日本超音波医学会で肺癌取扱い規約の手術記載P因子に対応させた肺癌胸膜浸潤の超音波診断基準(uP分類)が公示され,第69回日本超音波医学会で承認された.我々は自験例を対象に,この診断基準に基づき,uP分類と病理所見との関連を評価し報告した.(J Med Ultrasonics 26,1099-1103,1999)
対象症例は,術前にuP分類を評価し,切除標本で病理学的に胸膜浸潤の評価を行った末梢肺野型原発性肺癌112例である.手術前1ヶ月以内に対象症例に対して評価を行い,術前評価は超音波断層法を10年以上経験した呼吸器内科医が立会いのもと評価を行った.病理学的評価は,Hematoxylin-Eosin染色,Elastica-van Gieson染色を用いた.
Sensitivityは,p0で93%(27例中25例),p1で81%(32例中26例),p2で52%(27例中14例),p3で69%(26例中18例)であった.Predictive Valueは,uP0で83%(30例中25例),uP1で60%(43例中26例),uP2で67%(21例中14例),uP3で100%(18例中18例)であった.uP3と診断した症例は全例がp3であった.また,up1と診断した症例のうちp0が2例,p2が12例,p3が3例,up2と診断した症例のうちp1が2例,p3が5例とup1,up2ともに過小評価する傾向にあった.
末梢肺野型肺癌の胸膜浸潤を評価するうえで,超音波診断は極めて有用といえる.しかしながら,空気や骨に囲まれた呼吸器領域での超音波診断には限界がある事も事実であり,この点を留意してこの診断基準を用いるべきであろう.
その後に集積した症例を加えて,発表させていただく予定である.